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えひめ、その食とくらし(平成15年度)

(1)婚姻の儀礼

 婚姻とその後の嫁の里帰りにかかわる食を取り上げる。婚姻に関する習俗は、地域・時代・家でも差異が大きい。分類としては婿入婚・嫁入婚(*7)の類型に大別される。ここでは、嫁入婚の一例をとって、婚姻の儀礼の流れを示す。
 スミザケ…縁談がまとまると仲人が米、酒、タイなどの物品を携えて嫁方を訪れ、酒を酌み交わして婚約が成立した。これを、スミザケ、スミゾウモンなどという。
 結納…スミザケが終わると結納が行われる。結納をタノメとかタノミという地域もある。仲人や婿、その両親などが結納の品を持って嫁方に出向く。結納後、会食するのをユイノウビラキと言う地域もある。婚約は結婚の約束、結納は結婚の確認とされる。両者が一体化して結納だけ行う地域も多かった。
 結婚式と披露宴…結婚式のことをシュウゲン(祝言)とかカタメなどという。その順序をみると、まず婿入りが行われ、そのあと嫁が嫁入り先(婚家)に向かう。嫁が実家を出る時には、屋敷神に参ったり、今まで使っていた茶碗(ちゃわん)を割ったりするデダチ(出立ち)の儀式がある。次いで嫁入り行列が出発する。婿は早めに自宅に帰っているので、行列に同道するのは仲人である。この途中で嫁の村の若者たちが嫁入り行列を妨害する地域もあった。地域の共同体から出て行く者への別れの儀式で、妨害されるのを誇りとした。
 嫁入り先に着くとオチツキボタモチ(落ち着きぼた餅)(写真2-2-7参照)が出され、次いで結婚式に移ってカタメの盃が取り交わされる。この式の様子を近所の人たちに見せる地域があり、この時に婚家の村の若者たちが嫁の落ち着き石といって大きな石を家の隅へ持ち込む地域もあった。嫁入り行列の妨害とは逆の意味を持つ行事といえる。妨害した青年たちへも、石を持ち込んだ青年たちへも、酒・さかなが振る舞われる習いであったという。
 披露宴はタルビラキとかアラワレなどと呼ぶ。披露宴は数日間にわたる所もあり、最後の日に手伝いの人々を呼んでマナイタアライと呼ばれる慰労のための宴を催す地域もあった。
 アルキゾメ(歩き初め)…祝言の翌日、ヨメノミヤゲ(嫁の土産)といって近隣に菓子などを配ったり、歩き初めといって姑(しゅうとめ)と共に近所に挨拶(あいさつ)回りをする。


*7:婿入婚・嫁入婚 婿入婚は婚姻の儀礼が嫁方で行われ、その後一定期間婚舎(結婚生活を送る場所)が嫁方にある結婚形
  態である。嫁入婚は、婚姻の儀礼を婿方で行い、婚舎も婿方にある結婚形態である。

写真2-2-7 落ち着きぼた餅用のお膳 

写真2-2-7 落ち着きぼた餅用のお膳 

足つきの膳に落ち着きぼた餅用のお皿を載せ、この皿に5個のぼたもち(内1個はきなこ付き)が盛られた(八幡浜市穴井の**さんの話)。八幡浜市穴井。平成15年9月撮影