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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(5)大頭八幡(おおとはちまん)大神社のクロガネモチ(越智郡吉海町)

 大頭八幡大神社は吉海町福田地区にあり、社叢は町の天然記念物に指定されている。このクロガネモチは、鳥居の左奥にある。とほうもなく大きな木で、薄暗い樹叢を背景に、白い幹が異様な雰囲気を漂わせて、立ちはだかっている。枝は上部で四方に張り出し、各々屈曲して、黒い樹冠を構成している。枝が剥がれ落ちた跡がある。その落枝は根元で倒壊しているが、まわりの高木に匹敵するほども大きい。
 この木は、単に巨木大木という普通の単語では形容できない。息苦しくなるほどの威圧感を感じさせる。木の無機的スケールが威圧するのではなく、木に宿る生命感が見る人を威圧する。自然現象でできたのでも人間の構築物でもなく、数百年かけて生き続けた結果の姿である。胸高幹周は4mほどもあり、クロガネモチの木としては県下で最大級である。クロガネモチは、モチノキ科の常緑高木で、低地の社叢林には普通に自生している。雌雄異株で、雌木は秋には見事な真っ赤な実の束をつけるので、好んで植栽される。
 境内に隣接する民家の老婦人の話では、嫁いだ頃から、この森の中にはとてつもなく大きな木があると知らされていたそうで、林を透かしてその木を見たことはあるが、怖くて近づいた事はなく、そばに行けばたたりがあるとも、枝に触れると病になるとも言われていたので、木に近い道を帰るときは走ったそうだ。また、以前は、しばしばのろいを込めた藁人形が打ち付けられていたそうだ。
 平成元年(1989年)秋の豪雨の朝、大音響をたてて大枝が落ち、手前の木々をなぎ倒したので、外に全体が見えるようになったのだ。枝が落ちたのは、枝の付け根のうろにハチが巣を作ったためとも、落雷のせいとも言われている。

写真2-3-5 大頭八幡神社のクロガネモチ

写真2-3-5 大頭八幡神社のクロガネモチ

平成2年12月撮影