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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(1)海運発展の原点-帆船の活躍

 第1章第2節の「島々の歴史的特質」の結びで述べたように、島々の人たちは歴史の黎明期の原始時代から現代にいたるまで、瀬戸内海全域を舞台として積極的・意欲的に海に乗り出し、海を切り開き活用してきた。島々の人たちが海に生き抜いたバイタリティこそ島々の歴史的特質であり、島々の歴史を支えたバックボーンであった。
 我が国の海運の歴史を振り返って見ると、古代から中世にかけて船の航走は櫓や櫂を主体としたが、近世以降は帆を主体とした航走に変化し大量輸送を可能にした。すなわち、江戸時代における海運と海上交通を発展させたのは、弁才船(いわゆる千石船)を代表とする帆走専門の船であり、菱垣廻船・樽廻船・北前船や各地の地方廻船によって日本列島と瀬戸内海が縦横に結ばれた。しかも、明治時代から大正時代にかけて海運の近代化政策による西洋型帆船の普及と並行して、従来の弁才船型の和船と西洋型帆船を技術的に折衷した帆船が登場し、機帆船に取って代わられるまで国内海運発展の一翼を担った。
 まさしく、わが国の国内海運の原点は帆船であり、昭和を生き抜いた60歳代から70歳代の人たちも櫓櫂はもちろんのこと帆船操縦からスタートしたのであった。