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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(2)瀬戸内海の漁業環境

 瀬戸内海は本州・四国・九州によって囲まれた地域で、東は紀伊水道より淡路島を挾んで、鳴門海峡と明石海峡があり、西に関門海峡、豊後水道を通って速吸(はやすい)瀬戸(豊予海峡)がある。海岸線は4,800km、面積は19,000km²の海域(⑧)である。
 瀬戸内海に流入する潮流は、外洋水の豊後水道系と混合水の紀伊水道系及び沿岸水の関門海峡系がある。豊後水道系を出入りする海水量は紀伊水道系のそれの約5倍に達する。そのため、東西両水道からの潮流の混合は、瀬戸内海東よりの塩飽諸島付近である(⑧)。
 表海水温は、2月下旬から3月上旬にかけて8~9℃の最低水温を示し、8月下旬から9月上旬にかけて28~29℃の最高水温を示す(⑧)。
 潮流の速さとも関係の深いものとして、第1章第1節に記したとおり、瀬戸内海には「灘」と「瀬戸」がある。ここは、昔から好漁場であるとともに、交通の難所でもあり、船の遭難の多い海域である。このような灘と瀬戸に特色をもつ瀬戸内海に生息・回遊する魚種は豊富である。魚類約600種、エビ類約60種、イカ・タコ類約20種、貝類約260種であるが、そのうち漁業生産上重要なものは約1割程度であると言われている(⑧)。灘海域では、昔から網漁業が中心に営まれ、瀬戸海域では、一本釣・はえ縄漁業を中心に多種多様な漁業が営まれてきた。さらに、取る漁業から作る漁業(栽培漁業)への先導的機関として、昭和38年に越智郡伯方町尾浦に設立された瀬戸内海栽培漁業センターにより、魚介類の人口ふ化→育成→放流が行われ、島々にノリ養殖だけではなく、クルマエビ・タイ・ヒラメなどの海面養殖業も起こってきた。
 一方、瀬戸内海沿岸の新産業都市の工業開発や都市化による工場や都市排水、船舶による廃油投棄、海岸の埋立てによる自然海岸の減少など漁業環境にとってマイナス面も見られる。しかしながら、瀬戸内海は魚種が豊富なこと、京阪神を始めとする大消費地が近いことなどから、中・高級魚を活魚として市場に供給できる優位性は失ってはない。