データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

柳谷村誌

三 その他の伝説

 山 姥 

 昔、おんば坂といわれる坂が落出の上の方にあって、その近くの岩屋に山姥が住んでいた。山姥は、毎年正月の餅つきをするようになると手伝いに来た。そして山姥は、餅つきの日は毎年同じ日にするよう、変えてはいけないと言っていた。しかし、ある家では、山姥が来ると、シラミを落してきたなくてしょうがなく、定めていた日の前日に餅つきをすませてしまった。するとそれ以来、山姥は来なくなったけれども、その家では、正月の餅がくさって食べられなくなったという。それから、不幸がないかぎり、正月の餅つきの日は、変えないものだと言われるようになった。

 山 犬 

 山犬は、普通の犬とほとんど変わりないが、変った毛が耳まではえており、暗やみで目が光る。また山犬は狼様の使いであり、願いごとは狼様に頼むと叶えてもらえるという。しかしその人が死んだときには、山犬がその死体をとりに来るという。

 エンコの恩がえし 

 むかし、むかし、瓜をたくさん作っている百姓のはたけから、毎晩瓜をもいでゆく者がいた。百姓は、きっと子供のしわざだろうと思い子供を叱ったが、その子供が言うのに、「頭に皿をかぶった赤い人が来て食べている」という。それで夜見張りをしていると、エンコが瓜を食べに来ていた。主人はそのエンコに、「お前は無断で瓜をなぜ食べた」と言って怒り、エンコの頭の皿の水をかえし、「瓜を食べるからばちが当ったんだ」と言った。エンコは悪かったと謝って、水をくれたら何でも願いごとをかなえてあげると言う。「助けてくれたら、軒の下にカギを吊っておけば、欲しいものは何でも掛けてやる」というので、主人はエンコの皿に水を入れて逃してやった。するとそれから、エンコは毎晩軒の下のカギに欲しいものを掛けておいてくれるようになり、そのおかげで百姓は、大変ぜいたくな生活ができるようになった。ある日、その百姓は木のカギではいけない、もっと丈夫なカギをと思い、代りに鹿の角を吊しておいた。その晩も、エンコはいいものを、たくさん持って来たが、鹿の角を見るなり驚いて、キャーと叫び、持ってきたものを投げ出してしまった。それからエンコはまったく来なくなってしまったという。