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柳谷村誌

一 盆踊り

 盆踊りは、古く江戸時代から伝えられてきたものである。もともと盆に招かれたる先祖の霊を慰め、またこれを送る踊りと考えられて、それぞれ寺の境内や、村の広場などで盆の一六日へかけて、老若男女ともに大勢が集って踊られる。盆踊りは、供養踊りとして素朴であり、一面哀愁を感じさせるものも多かったようである。
 踊りは、手踊りをはじめ、ボンデンヤ、センス、手拭などを持って踊るもの、またはなやかな衣装を揃えているところもあった。踊り歌もいろいろあって、これらが拍子をとるもの、また音頭をとるものによって楽しく踊られ、娯楽に乏しいこの時代の大きな楽しみであった。仏の供養が目的で始まったこの盆踊りも、時代の流れに沿って、いつしか若い男女のまじわりの場となり、明治、大正の時代にあっては、風俗を乱すという理由により、きびしい取締りが行われた。しかしそのなかにおいても、あちこちで受け継がれて、昭和の初期までは盛んに踊られた。
 最近では、都会、田舎を問わず盆踊りは、人々のふれ合いの場として見直されてきている。盆は、我が村でもふる里への墓参などで帰って来る人たちによって、一番活気づく時である。毎年の盆踊り大会を、一層意義あるものにしなければならない。
 今郷土に残されている踊りは、祖先があらゆる時代に感情をこめて踊り伝えてきたものであり、ほとんど人々から忘れられようとしているが、一つでも多く後世に伝えてゆきたいものである。