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柳谷村誌

五 万歳小唄

   ○豊年踊り
 子とさえのさえのさ
  年内 夫婦は 睦まじく 「また 仲良く」
  暮すのが 福の神 やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 丑とさえのさえのさ
  牛こそ 農家の宝ぞや 「また 求めりゃ」
  我が家の為となる やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 寅とさえのさえのさ
  隣の宝を招くよに 「また 我が家に」
  宝を招かんせ やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 卯とさえのさえのさ
  運づくものとは云うけれど 「また 稼ぐに」
 おいつく 貧乏なし やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 辰とさえのさえのさ
  やれ立つそれ立つ今も立つ 「また 国々」
  まわりて 稼ぎ立つ やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 巳とさえのさえのさ
  皆さん寄りて夜話しに 「また 今年は」
  世がよて 米さかる やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 午とさえのさえのさ
  うまうま浮世を暮すのは 「また 十七」
  八から 二十まで やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 未とさえのさえのさ
  未の難どき油断なく 「また 心に」
  渡世を もたしゃんせ やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 申とさえのさえのさ
  さるとは親にも孝行な 「また 男の」
  子なら持たしゃんせ やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 酉とさえのさえのさ
  やれとるまたとる今もとる 「また 伊勢宮の」
  河原で鯉を取る やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 戌とさえのさえのさ
  ぬくいところに奉公して 「また つとめりゃあ」
  我が身のためとなる やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
 亥とさえのさえのさえ
  いよいよ五穀が成就して 「また これから」
  世の中 豊なる やれ豊年かいな 「チョイト 豊年じゃい」
   ○才蔵舞唄
 徳若にゃ ご万歳は 三坂にかかる白雪は
 とけて流れて重信の 御手洗女郎の化粧の水
 まことに目出度う 候らいけれど
 徳若にゃ ご万歳は 伊予の松山名物名所
 新立ぐちの堀端の 八ッ股榎がこれ名所
 まことに目出度う 候いけれど
 徳若にゃ ご万歳は 正月吉日の初夢に
 めでたい年の夢を見た 門に門松しめ飾り
 祝の松のそでの下 鶴と亀とが舞い遊ぶ
 まことに目出度う 候いけれど
   ○宮島心中
 一つさえの 一つとのさ
  器量よし自慢のお初さん 通いつめたが徳兵衛さん
  この馴染ようかいなー
 二つさえの 二つとのさ
  文でよ知らして忍び逢い 出合す所は思案橋
  心もあせるお初さん この話そうかいなー
 三つさえの 三つとのさ
  宮島育ちのお初さん 連れて渡ろか二十日市
  私しゃいずこの果までも この行きまするわいなー
 四つとさえの 四つとのさ
  四方山因果なわしが身を まま母がかりのその中で
  見つけられたる腹帯を このどうしようかいなー
 五つさえの 五つとのさ
  いろいろ気嫌もとりの山 願かけて親の返事を待つばかり
  この待ちましょうかいな 
 六つさえの 六つとのさ
  無性矢鱈に親様が 二人仲おば引き分けて
  たとえ宮島立つとても この別れまいぞいなー
 七つとさえの 七つとのさ
  泣く泣くお初は東町 長屋の門にて物案じ
  泣いて明かすよな浜千鳥 このあわれさよなー
 八つとさえの 八つとのさ
  刃や無常のはしがみよ 死ぬるよその日の装束は
  恋に好んだ白どんす この死にましょうぞいなー
 九つとさえの 九つとのさ
  この年月までも育てられ 親に御恩も送らずに
  親にさきだつ不幸者 このどうしようかいなー
 十とさえの 十とのさ
  とうとう来たかや徳兵衛さん 死ぬる所はここかいな
  綾や錦で身を飾る この行きたいわいなー
   ○義経千本桜
 一つといのさ 一つといのさ
  人はよ士 木は桧 千本桜と云い伝え
  迷いやすきが恋の道 義経公かいなー
 二つといのさ 二つといのさ
  夫婦の仲もにこにこと 戦の門出のお杯
  早や開陣と待ち受けて 広めようかいなー
 三つといのさ 三つといのさ
  見染め逢染め思い染め かほど由緒の大身を
  我が君様と思い染め 身の果報かいなー
 四つといのさ 四つといのさ
  義経公が大将で 屋島の浦の舟戦
  平家はめいめい共々に 討死かいなー
 五つといのさ 五つといのさ
  いつぞや御恩のせつなさに 関の局がもの案じ
  天皇様にもう一度 花咲かせたいわいなー
 六つといのさ 六つといのさ
  無理にゃおさえてなでさすり お里がつけた愛のすし
  風味がよくて味わいな 良かりょうかいなあー
 七つといのさ 七つといのさ
  なんとまあきれいなよい殿ご 寿司屋のお里がほれらりょか
  子は親様の義理もある はずかしいわいなー
 八つといのさ 八つといのさ
  やさしき女子の寝入りばな 見れば枕が二つある
  都のことも吾がことも しのぼうかいなー
 九つといのさ 九つといのさ
  雲井に近き御方の 惟盛さまとはつゆしらず
  思いこんだが恋の道 どうしようかいなー
 十といのさ 十といのさ
  とうとう源氏の梶原が 権太にほうびの陣羽織
  惟盛さまにもう一度 花咲かせたいわいなー
   ○柱揃え 
 一本の柱には「一天が世界しょ」 治まる御代のしるしかや
 二本の柱には「にこにこ笑たが大黒さん」 若えべす
 三本の柱には「左近が右近じゃ」 花たちばなの しるしかや
 四本の柱には「四天がまふくしょ」 内の悪魔をはらい出す
 五本の柱には「五葉まします」 五葉の松
 六本の柱には「六つの拍子もそろた」 千石舟の港入り
 七本の柱には「七福神としょ」 裏は七浦七えべす
 八本の柱には「八つ棟作りしょ」 八棟作りや黄金葺
 九本の柱には「九葉はさかずきしょ」 九葉のさかずきさずけられ
 十本の柱には「寿じゃ 福寿じゃ」 萬々歳こそ目出度けれ
   ○お半長衛
 やれ 一つとえ まだ一つとえ
  一番名高い京の町 お半さんははるばる伊勢参り
  こいつも笑いぐさ
 やれ 二つとえ まだ二つとえ
  二人が出会す坂の下 お前さんは帯屋の長衛さん
  こいつも笑いぐさ
 やれ 三つとえ まだ三つとえ
  見れば信濃屋のお半かや よい道連れじゃとお手をとる
  こいつも笑いぐさ
 やれ 四つとえ まだ四つとえ
  宵の泊りは市兵衛屋 勾欄越えての奥座敷
  こいつも笑いぐさ
 やれ 五つとえ まだ五つとえ
  色の始めに思い染め ぱらりと咲いた梅の花
  こいつも笑いぐさ
 やれ 六つとえ まだ六つとえ
  無理に立ったが早京都 とろ石御門や東門
  こいつも笑いぐさ
 やれ 七つとえ まだ七つとえ
  名主は帯屋の長衛さん 軒をへだてて信濃屋へ
  こいつも笑いぐさ
 やれ 八つとえ まだ八つとえ
  やりたいお半の留守のまに 油屋の幸次といれまぜて
  こいつも笑いぐさ
 やれ 九つとえ まだ九つとえ
  この母さんはどうよくな これも因縁約束と
  この笑いぐさ
 やれ 十とえ まだ十とえ
  得心なされや長衛さん ほかなる殿御はわしじゃない
  こいつも笑いぐさ
   ○なぞづくし
 やれ 一つとせえ
  広い世間はどこまでも なぞと人情のかけくらべ
  かけて解くのがおもしろい
 やれ 二つとせえ
  風呂屋のけんかとかけまして 上野の戦と解くわいな
  ぬき身でさわぐじゃないかいな
 やれ 三つとせえ
  三つ子の夜ばいとかけまして 石重丸と解くわいな
  ちちを深すじゃないかいな
 やれ 四つとせえ
  よごれたふんどしとかけまして 無心の手紙と解くわいな
  ヒヤヒヤ書くではないかいな
 やれ 五つとせえ
  いがんだ材木とかけまして 郵便さんと解くわいな
  はしらにゃならんじゃないかいな
 やれ 六つとせえ
  無理な姑とかけまして 西洋文学と解くわいな
  ようめにくいじゃないかいな
 やれ 七つとせえ
  夏の夕立とかけまして 雷さまと解くわいな
  ふるなるひかるじゃないかいな
 やれ 八つとせえ
  破れた障子とかけまして 冬の鶯と解くわいな
  はるを待つではないかいな
 やれ 九つとせえ
  紺屋の娘とかけたなら 上手な将棋と解くわいな
  つめてが黒いじゃないかいな
 やれ 十とせえ
  豆腐屋の娘とかけたなら 日清戦争と解くわいな
  からを攻めるじゃないかいな