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柳谷村誌

二 葬儀

 不幸組 

 村内各部落に葬式の手伝いを主体とした組が存在し、それらを不幸組とも呼んでいる。伍組単位の場合が多いようであるが、大きな伍組などでは分れている。死者の出た当家に対して不幸組が協力して、そのシマイ(葬儀)をすることは、久しい村人のつきあいであった。

 お悔み 

 香典のことを見舞とかお悔みともいう。昔はお悔みは、米一升・米一升と金など、それぞれの部落で異っていたようである。酒を持って行く慣習のところもあったようであるが、多くは不幸には酒を使わなかったようである。昔は米を入れた色柄とりどりのたくさんの袋が、仏前に供えられていた。

 穴掘り・道具作り 

 葬式の日は、伍組長のふれによって、各戸から男女が手伝いに集まる。女は食事の世話をし、男は伍長の指図によって手分けをし、穴掘り、ツボホリともいった、笠石取り、ハナシバ取り、棺桶をはじめとする野道具を作る道具方など、それぞれ仕事が多かった。道具方は、天蓋・燈籠・花籠・シカバナ・タツガシラ・花立・線香立て・六地蔵・草履・縄・孫枝など一切を準備した。また入棺のため、棺桶を早く作らなければならなかった。穴掘りも道具作りも、終ったら道具清めといって、それぞれ酒一升を出し、それは残さぬように飲んでしまうものだといった。

 湯 灌 

 湯灌は、死体が置いてある部屋で行う。湯灌をユカワともいい、ごく身近かな者が数人で行う。湯灌の湯は先に水を入れ後で湯を加える。死体をきれいにふいて、死者の生前一番好んでいた着物を左前に着せ、その上に白い着物を縫ったのを着せる。その白い着物は、娘や嫁、身近かな人が寄り合って縫う。手おい、脚絆を着け、たびを左右反対にはかせた。

 入 棺 

 棺は座棺が多かった。昔は桶だったが箱にかわった。死者は棺の中に座ぶとんを敷き、その上にあぐらをかいた形で座らせる。首にサンヤ袋をかける。これは白木綿でつくり、この中には、ロクドウノカネといって、六文銭と、ゴコクノシナといって、米・粟・稗・トウキビ・大豆・ソバなどの中から五品を選んで紙に包み入れた。その他身近かな者が生前の好物など、思い思いに入れた。そしてハナシバの葉を棺いっぱい入れた。

 葬 儀 

 座敷に棺を移して葬儀にうつる。坊さんをオッサンと呼ぶ。普通の葬儀の場合は、オッサンは一人であった。カネ・タイコ・ミヨウハチをナリモノといい、これをうつのは伍長と組の者の役目だった。焼香によって葬儀は終る。次に出棺の準備にうつる。近親者によって棺の蓋に釘をうつ、釘は石でうつならわしである。
 棺は直接なわをかけ、それに竹の棒を通して、二人でかつぐようにする。輿を使っていたところもあったようである。

 出 棺 

 出棺は、座敷口を開けて出すところが多い。近親者は、白紙でつくった三角形のホウカンを頭につける。モチカタといって、棺をかつぐ人は、わらぞうりをはき、家から地面へおりる。棺を庭に出した後、アナマワリといって、その周辺を、オッサンを先頭に位牌・マクライ・天蓋などの順序で、ナリモノを鳴らしながら、左回りで三回するところが多いようである。出棺の時、近親者が茶椀を門先でわる。これは死者が食物の縁を断って、再び戻ることをさまたげる意味ともいわれ、また死者の願をほどくためともいわれている。

 葬 列 

 野辺の送りの葬列はところによって風習が多少異るが、ミチキリといって、組の年寄りなどが、鎌とわらを少し持って先頭になり、ナリモノを鳴らしながら行く。ミチキリが刃物を持つのは、道を切り開くとか魔物を払うためともいう。棺は、モチカタがちょっとかついだ後は、組の人たちが野辺までかついで行った。

 埋 葬 

 埋葬することをイケルという。死者が西を向くよう、棺を入れるところが多い。はじめ身近かな者が手で土を少しかけて、後は組の人たちがきれいに埋葬する。上には、カサ石といって、大きな平たい石を置く。
 カサ石の前に、オガミ石、あるいは、エンノ石と呼ばれる石を置く。カサ石の上に後から石塔が建てられる。
 野辺の送りをすませて帰ったときは、シオバライといって、家の入口に塩を入れた皿と、手だらいに水を入れて置き、それで清めて家に入る。オッサンが後拝みをする。

 トキノメシ 

 トキノメシといって、死者との別れの食事をする。トキノメシを大きな釜でたいたときに小さな穴があくが、この形を見て、死者が、トリ・ヘビ・ウマなどに生れかわったなどと故人を偲んだ。

 墓直し 

 葬式の翌日は朝早くから、近親者たちが墓地に参って、川から砂や小石を取って来て墓に敷き、カサ石を直したり、オイ、あるいはヒオイと呼んで、わらや板竹などで作った屋根を墓の上にする。これは、四九日の法事まで建てておき取除きするところが多い。
 我が村では、昭和三〇年代まで、ほとんど土葬であったが、墓地の改葬・火葬場などの整備によって、近年では、ほとんど火葬になってきた。それに伴って、葬儀店を利用するようになり、棺をはじめ、葬式用具はほとんど葬儀店が揃えるようになって、葬送儀礼も大きく変ってきた。