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柳谷村誌

一 死亡

 魂呼び 

 人が息をひきとった直後、死者から離れた霊魂が、大空に飛び去ってしまわないうちに、呼び返すことによって、死者を蘇生させることができると信じ、魂呼びといわれる風習があった。昔は、我が村でも、人の死後直ちに屋根に上って、一升枡の底をたたき、また笠や箕、うちわなどで招きながら大声をあげて、その人の名を呼び「モドレヨ」、「モドレヨ」と繰返し呼んだという。
 死者に末期の水を飲ますといって、茶椀や湯のみなどに、水を入れておき、息をひきとった直後に、ガーゼやハナシバの葉などでくちびるをぬらしてやり、その後近親者や隣近所の人たちにもしてもらう。死者は、北枕に寝かせ、死者のふとんの上に刃物を置く、これは魔除けのためといわれている。

 マクライ 

 枕がみへは、マクライの飯を供え、線香を一本、ローソク、ハナシバを立てる。マクライの飯は、二合半の米をたき、その飯を茶椀に山盛りに盛り、残りで丸いにぎり飯を四個つくる。そして膳の中央に、飯を盛った茶椀を置き、その回りににぎり飯を置く、飯を盛った茶椀の莫中には、一ぜんのはしを立てる。マクライの飯は、死者があの世へ行くための弁当だといわれている。また枕団子はオモリモノと呼ぶ。オモリモノは、米の粉をひき、水でねって団子にしてゆでる。これを三本の細い竹を上部で結び、一本の竹に四個から五個くらいずつさし、三角形に組み合せ少し大きな団子をひらためにしてくっつける。これを三角形に作った膳に立てる。マクライの飯、オモリモノは、供えておいて野辺の送りの時墓に持って行く。

 二人使い 

 弔いのある家を当家と呼んだ。死者の出たことを、当家から寺や親戚に知らせる走り使いは一人で行くものでないといった。走り使いは近所の者が二人で、当家に近い親類から、遠い親戚へと順に知らせて行く。電話も車もない時代に知らせることだけでも大変だった。
 死者が出るとすぐ、家族の者が床の間に半紙を一枚はる。これは神のおそれのためといわれ、四九日の法事が終るまでとらないところが多いようである。

 お通夜 

 死者の通夜はオツヤ、ヨトギなどという。お通夜には、親類や死者の友人などが集まる。近親者はそばで一緒に寝るが誰か一人は交替で必ず起きていて、線香やローソクの火を絶やさないようにし、またその部屋へ猫が入らないよう番をした。