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柳谷村誌

第一節 やなだにびとの文化化活動以前に見せていた地肌色

 ―夏緑落(広)葉樹林の肌色

 北緯三三度台の緯度、二四〇メートル(県境)から一五六二メートル(笠取山頂)に及ぶ標高差、面積の大部分を占める大起伏山地、これらを複合した地肌の広がり。この大地(地肌)は、やなだにびととかかわりのない時期に、ひとを除いた動植物と、どんな融和のかかわりをつくり上げて、夏緑落(広)葉樹林の地肌色となったか。そして夏緑落(広)葉樹林の地肌色は、やなだにびとの文化化諸活動が始められるまで、その生態美を、ずいぶん永く見せていたものだろうか。

 植物の群落

 (1)裸の地肌に、はじめて苔・芝草・雑草など、小さい先駆植物の群落社会ができた。コケやシバ類がさかえたころと見られる。(2)一年生の丈の低い草木類が目立ち、やがて丈の高い草木類がさかえたころとなる。(3)やがて多年生の草木類や木本類が交替する。多年、生き続ける植物に進化し、灌木・マツが草木類に代わってさかえる。(4)高い木が地面の上層を覆う。ブナ・ナラ・クリ・ツガなど夏緑落(広)葉樹が、モミなどの常緑広葉樹を交えて、温帯樹乃至亜寒帯漸移帯樹林相を見せる。灌木・草木・蘇苔等は、高い木の下層に適地を選んで、夏緑落(広)葉樹と共生する群落をなし、また標高差に応じ、低地から高地にかけて群生する。

 植物・動物共生の生態

 水に棲む微生物をはじめ、苔につく虫、樹間の一すじの光を追ってとび交う昆虫等々。動物たちの生い立ちもまた、植物に増して多様多彩であったであろう。日の光の受け入れ、大気とのやりとり、植物・動物の共々に生きてゆく関わりなど、ひろやかになごみ合った生態のすがたであったものと想われる。

裸地から相林まで変遷図

裸地から相林まで変遷図


夏緑落(広)葉樹林期の生態分布図

夏緑落(広)葉樹林期の生態分布図