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柳谷村誌

第一節 岩石と土壌①

 土壌は地塊を形成している岩石が、崩壊し、分解してできた母材に、ある生命力がはたらいて生じた、彫刻体の最上部をなしているもの、それが土とも大地とも呼ばれる土壌である。我々柳谷びとと和み合い、いのちを感応し合い、生ける証しを通じ合う、最も親密な相手である。

 土壌の生成

 我々のからだの皮膚筋肉が一様でないように、柳谷彫刻体の最上部をなしている岩石片、土壌も一様ではない。からだの皮膚・筋肉は、体内へとり入れられた諸々の栄養要素が、その母材となって、内臓諸器官の秩序あるはたらきを経てつくり出される。岩片・土壌も亦、岩体から岩石片へ崩壊(風化)し、そして土壌母材に崩分解する。土壌母材はさらに、微生物の着生や植物生成などの助成作用を受けて、土壌化作用を進め、「自然土壌」に転生するのである。「断片・偶然・謎」として、無関心の渕に葬り去りがちのこの一過程にも、なるべくして成る自然のはたらきの秩序が伺がえないだろうか。     

 土壌の分類

 その一は粒子の大いさによる。直径ニミリ以上を礫、二ミリ以下○・一ミリ以上を粗砂、○・一ミリ以下○・○二五ミリまでを細砂、○・○二五ミリ以下○・○一ミリまでを微砂、そして○・○一ミリ以下を粘土と呼ぶ。その二は、粘土の含量による。
 粘土五〇パーセント以上を植土、五〇以下三七・五パーセントまでを植壌土、三七・五以下二五パーセントまでを壌土、二五以下一二・五パーセントまでを砂壌土、一二・五パーセント以下を砂土と名づける。      
 土壌の分布

 わが村の土壌を六分類し、夫々の分布状態を区分図示する。(1)黒ボク土壌-主要稜線上の緩斜地やくぼ地に分布している。火山灰を母材とする土壌で、黒色のA層は腐植に富み、二五センチ以上ある。B層との境は比較的判然としているが、木材の成長はよい。四国カルスト高原に分布している。広さ一九・五八平方キロ、全面積比一五・四四パーセントである。(2)淡黄色黒ボク土壌ー主要稜線上の経斜地・くぼ地に分布し、A(B)C断面をもつ土壌で、火山灰を母材としている。黒色又は黒褐色のA層は、一五センチないし二五センチぐらいで比較的浅く、明黄褐又は灰褐のB層との境は、明瞭である。PHは中性に近いが、置換酸度は大きく、置換石灰量はごく小さい。林木の成長一般によくない。中津圏域小松谷上流右岸と、明野野谷上流に挾まれた八五六メートル稜線中心に分布する。広さ一・二八平方キロ(一・○パーセント)である。(3)褐色森林土壌ー斜面の下部や緩斜地等、適潤な水分をもつ環境下に分布し、腐植に富んだ膨軟な厚いA層からB層に漸変している。面積七三・六八平方キロ(全村の半ば以上五八・一一パーセント)である。(4)乾性褐色森林土壌―標高三〇〇メートル以上の主要稜線及びこれから派生した尾根筋に分布する。(イ)中津山山塊-一三六六メートル頂より、七五〇メートル頂及び七四八メートル頂へかけて。(ロ)仁淀村と村境脊梁一〇四九・五メートル頂中心として。(ハ)正木が森頂より一三三六メートル頂へ、更に八八八メートル頂(高地)及び一二四〇メートル頂へ、後者は更に、八〇〇メートル頂(小黒川)と九一四メートル頂(古味)へ。(ニ)丸石山頂より、一二一二メートル頂へ、更に一〇三九メートル頂(中久保)へ。(ホ)水なし山南西一三六〇メートル頂より、
南東に延びて滝野へ。(ヘ)水なし山頂より北東・東・西方へ脊粱を追って。(ト)美川村境脊梁中、一四九一メートル頂より大成へ、一三九一メートル頂より七八七メートル(永野)へ、東下して七五六メートル頂(立野)へ。A層の発達はよわくて浅く、B層は腐植乏しいか含まない。この土壌の広さ二七・四四平方キロ(二一・六四パーセント)である。(5)湿性掲色森林土壌―斜面下部や谷底・谷間の緩斜地など、水分が集ってくるところに分布している。A層は黒褐色、暗褐色で腐植にとみ、褐灰色のB層に漸変している。高野の向かいの斜面(九〇六ノートル頂と一〇〇六メートル頂を含める斜面)と、中久保川左岸、郡境に一部含まれ、西方碁石が森附近へ延びる。この土壌広さ一・二八平方キロ(一・○○パーセント)である。(6)岩屑土-岩屑性土壌-主として森林限界以上に分布し、A(B)C断面をもつ土壌で、暗褐色のA層はあまり発達せず浅い。A-B層またはB層に漸変している。小黒川上流地域で、つぎの一連の頂点を結んで囲まれた地域に分布している。-一三三六メートル頂→一三五四・一メートル頂→一二一○メートル頂→九九〇メートル頂→八五〇メートル頂→六五〇メートル頂→五〇六メートル頂→六五〇メートル頂→一二二〇メートル頂→一二〇三メートル頂→一三三六メートル頂へ復結。この面積三・五三平方キロ(二・七八パーセント)である。

 土壌の生産力可能性区分

土壌の生産力可能性は、極く概略に等級分けされる。一等地から四等地まで四等級区分されている。一等地には、湿性褐色森林地土壌が組み込まれる。二等地は、黒ボク土壌及び褐色森林土壌が組込まれ、その面積九三・二六平方キロ(七三・五五パーセント)である。三等地は乾性禍色森林土壌と、淡黄色黒ボク土壌が組み込まれる。広さ二八・七二平方キロ(二二・六五パーセント)である。四等地は岩屑性土壌がこれに組み込まれる。     

 岩石の大要

岩石は、その大きさにより、岩体と岩片に二分類する。いずれも性質については、その硬度により、風化の状態については、その風化殼の深度によって分類する。岩体の硬度は、一秒間の弾性波伝播速度、岩片の硬度は、一平方センチにおける対圧強度で格付けする。わが柳谷彫刻体の岩体の硬度は、秒間三・〇キロ以上を示して硬に、岩片の硬度は、一平方センチにおいて、四〇〇キロ以上を示して硬に格付けられる。つぎに風化の状態は、中津山々塊の頂上に続く上部地域の中程度のほかは、彫刻体の全域に及んで浅い風化殼を示している。
 つぎに、表層地質の分布状態を見よう。柳谷彫刻体の表層地質は、略七種類の岩石層でできている。(1)砂岩粘板岩互層は、砂岩は灰色か灰白色を呈し、長石質アレナイト及び長石質ワッケに属するものである。粘板岩は、暗灰色か暗緑暗緑灰色を呈し、ち密である。(2)玄武岩質凝灰岩・玄武岩―砂岩・泥岩互層部に小規模に分布しており、暗緑黒色で、ち密な玄武岩を主とする。(3)チャートは白色乃至雑色で、種々の色を呈する。厚さ数センチ単位の泥質か、緑泥石質の薄層をはさんでいるものや、無層理または層理があって、網状膜石英を伴う塊状のものなどがある。本岩中には放散虫やコノドントの化石を産する。主に古世代のものであって、三畳紀のものもある。マンガン鉱床の主要な母岩となる。(4)黒色千板岩 泥質岩が源岩であり、黒色か黒灰色を呈する。緑色千板岩と互層する場合も認められる。分結石英脈の認められる部分もある。(5)石灰岩-一般的には淡灰色か黒灰色を呈し、ち密で塊状である。(6)珪質千板岩はチャートを源岩とする岩石である。泥質・凝灰質源の薄層をはさみ、板状を呈するものや塊状のものが認められる。(7)崖堆性堆積物は崖堆の他に、土石流や地すべり等の山麓堆積物をひっくるめたものである。

黒ボク土壌分布図

黒ボク土壌分布図


淡黄色黒ボク土壌分布図

淡黄色黒ボク土壌分布図


褐色森林土壌分布図

褐色森林土壌分布図


乾性褐色森林土壌分布図

乾性褐色森林土壌分布図


湿性褐色森林土壌分布図

湿性褐色森林土壌分布図


岩屑性土壌分布図

岩屑性土壌分布図


土地等級分布図

土地等級分布図


チャート分布図

チャート分布図


砂岩粘板岩互層分布図

砂岩粘板岩互層分布図


石灰岩分布図

石灰岩分布図