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美川村二十年誌

四、姥捨て山

 美川村黒藤川長崎のヨラキレから約二時間半、山道を登りつめたところの高知県境に「姥捨て山」と称するところがある。全国各地に姥捨て山の伝説があるが、ここでも老人を山奥に置き去りにする習慣があったと伝えられている。不治の病におかされたり、働けない老人を経済的理由で辺地に置き去りにし、凍死や餓死させたのである。
 むかしの百姓の生活はごく貧しくその日その日の生活ができかねた。老人も割り切っていて自ら命を断ったり、家出をして物もらいの生活をするものもあり、家族に連れられて、山奥に置き去られることを宿命としてあきらめていたようである。高知県吾川郡あたりからも、ここに老人を捨てに来たとも言われ、また別の伝えではここは大罪人の斬首の地であったとも言われている。
 真偽のほどは、はかりがたいが辺境の不便な地に生活する人びとのくらしと、当時の世相をうかがうには十分である。約二〇〇年ぐらい前のことであろうか。
 ここに鳥居やホコラ、塚が立てられているが、こうした不遇な老人を供養するために建てられたものであろう。