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美川村二十年誌

三、赤蔵ヵ池と矢竹

 スキー場を中心とする大川嶺連山と面河川を距てて対峙するのは東の高知県境に連なる猿楽一帯である。この中に伝説につつまれた赤蔵ヵ池がある。
 この池は美川村の沢渡・二箆・筒城の山頂にあって湧水による自然の池で、水は農業用水に使われ、四国でも珍らしいジュンサイが生育している。池の周囲は雑木林で四季おりおりの変化があるが、池はつねに蒼然と不気味にしずまりかえっている。古書にも「鴨住ヶ池」、「阿蔵ヶ池」または「遊ヶ池」といろいろに記されているが、源三位頼政が退治した怪獣(ぬえ)はこの池に棲み、雲に乗って京の空へ往来していたと伝える。周囲五七五㍍、面積一万〇四七〇平方㍍という。
 この池から南東に三㌔下った県道の傍らに竹の群生が見られる。「矢竹」と呼ばれ頼政がぬえ退治に使用した矢の竹がこれであったと伝え、村は文化財に指定して保護育成につとめている。
   矢竹の特色
1、笹の一種で、竹の熊類ではない。
2、皮が竹のように落ちないでいつまでもついている。
3、一節から枝が左右に出る、どの枝も同じ方向に出るので扇形をしている。
4、葉がしのべ竹等より広くてつやがよい。
5、節と節の間隔が長く、節が小さいので矢に適している。
              (植物学者八木繁一による)
 池の近くに四二年からテレビの中継塔が建設され、四七年には村の観光開発計画に基づき用地の確保も出来ており、現在、富士企画株式会社が大規模な観光開発とゴルフ場を計画し、事業の促進をはかっている。