データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

美川村二十年誌

五、老人福祉

 社会福祉の施策で近年一番大きく取り上げられているものが老人福祉である。地域社会の進展に寄与してきた経験豊かな老人に、今後の余生をさらに社会のために役立たせ、また社会全体から敬愛さるべきであるとして、「老人福祉法」が制定された。四一年からは「敬老の日」が国民の祝日として制定された。老令人口は医学の進歩・生活環境の改善等によって、国全体の人口に対して占める比率が今後とも大きくなるものと思われる。
 1、老人健康診査
 老人福祉法に規定され、診査に必要な経費は国・県・村が三分の一ずつ負担して、村内の老人全員を対象として行なうもので、美川村でも昭和三九年から久万保健所の協力をえて、保健・療養指導に当っている。
 2、老人家庭奉仕員事業
 通称ホーム・ヘルパーと呼ばれるもので、身体上または精神上の障害等があって、日常生活を営むのに支障がある老人に対して、家庭奉仕員を派遣し日常生活の世話、及び手だすけをするもので、美川村に於ても四五年に臨時雇人で設置し、翌四六年から常勤で二名を配置、仕七川地区・弘形地区で現在一一名をお世話している。黒藤川地区は該当者がなくて設置していないが、地域や人数の関係から、急に必要な場合は介護人をおいている。
 3、老人クラブ
 山村の過疎化にともない、若い働き手が都会へ流出し村は益々老令化してきた。こうした中でお互いの教養を向上させ、励まし合い助け合う事で老人の力を少しでも社会に役立てようとして老人クラブが誕生した。
 美川村でも四一年一月二七日各地区で、老人クラブが結成され、六クラブ約三〇〇名が会員となり、同年四月美川村老人クラブ連合会が誕生して初代会長に岡崎広衛が就任した。活動の内容についてはクラブ毎に若干の相違はあるが、毎年一回の総会・役員会・研修旅行・神社仏閣の清掃・老人大学への参加などが活発に行なわれている。四八年度は七クラブで会員四七五名、県・村から一クラブ三万六〇〇〇円が育成費として補助されている。
 特筆すべきは四七年一〇月三一日、第一三回愛媛県老人クラブ大会に於て、美川村「寿敬会」(会長山本利秋)が、県老人クラブ連合会長賞をうけた事である。
 4、敬老会
 美川村の敬老会は四六年まで村内まちまちで部落によって行ってないところもあったが、四七年から地域公民館を中心として行われるようになった。補助金は七〇才以上の老人を対象に、村から四八年度で一人当り五〇〇円を交付している。また別途に七五才以上の老人には一人当り五〇〇円相当の敬老記念品が贈られ、米寿を迎えた老人には金糸で「米寿」と刺しゅうした座布団を、村長自ら訪問して贈呈し祝っている。
 5、老人医療の無料化制度
 健康で楽しい老後を送るためには高騰化する医療費から老人を守る事が根本的な老人福祉であると、七五才以上の老人を対象に老人医療費の無料化を実施することになった。国民健康保険・各種社会保険で本人が負担する分を県と村で半額づつ負担して本人を無料とするもので、老人医療費給付事業として四六年一〇月一日から施行された。つづいて四八年一月一日から国が老人医療費支給事業として七〇才以上の老人を対象に実施したが、所得制限など各種除外規定による対象外の老人ができた。これら対象外の老人に対しては前記の県と村で行なう老人医療費給付事業の該当者としてすくいあげた。
 また四八年四月一日から六五才以上七〇才までの「ねたきり老人」及び「ねたきりの状態にある老人」を、前記同様な制度で、県と村が事業を開始し、同年一〇月一日から国が実施にふみきり同じ方法で対象外の老人を老人医療費給付事業の該当者とした。
 同じ老人に対する施策を行うにしても、国と県とが違った制度を行い、しかも非常に細分化した制度のため複雑で、支給をうける老人は制度の内容をまったく理解することができず、ただ無料になったことのみが判然としているだけである。この制度は申請によるので権利ではないのである。そのため、老人はやや乱診の傾向があり全国の町村の財政をかなり圧迫した。それは老人医療費給付事業は負担割合が県と村が半々であり、国の行なう老人医療費支給事業でも、国が六分の四・県が六分の一・村が六分の一と常に村の財政にかかわりがあるためである。
 6、老人に対する諸施策
 老人憩の家 社会福祉の充実は、老人福祉からと云われている現在、郡内においても老人問題は大きく取りあげられているが、老人の願いをもっともよくかなえてくれるセンターとして、「老人憩の家」が建設された。非常に多くの経費を必要とするため広域で計画され、これも上浮穴郡生活環境事務組合でとりあげ、上浮穴郡全域を対象として建設されたものである。利用料は無料で利用人員は一日約一〇〇人、建築費は五、一四〇万円で四九年一二月九日に開館、老人福祉の拠点としての役割りを果している。
 老人相談員 独居老人・ねたきり老人を対象として四七年四月一日から老人相談員が設置され、みよりのない老人の淋しさを少しでも慰めようというねらいである。また社会福祉協議会で年一回以上お土産をもって、民生委員の協力のもとに、ねたきり・独居老人を慰問している。
 敬老手帳 六五才以上の全老人に対して、県は敬老手帳を発行してその長寿を祝福し、県立図書館・動物園その他県内の各催し物・観光地等の入場料が割り引きされ、旅行等のときに大いに役立っている。
 ホームサイレン 村内のねたきり・独居老人の留守対策として非常の場合や火災の場合、近くの人々にすぐ通報出来るようにホーム・サイレンを取り付けて事故防止に努力している。このホーム・サイレンは、当初は県の補助と村で半額ずつ出費して取りつける予定であったが、県の補助金が殆んどなく、村社会福祉協議会全戸会員費によって半額をまかなった。

老令者数一覧表(60才以上)

老令者数一覧表(60才以上)


老人健康診査状況

老人健康診査状況


美川村老人クラブ結成状況

美川村老人クラブ結成状況