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美川村二十年誌

二、計画の概要

 この振興計画は、同審議会の総会・部会で審議された基本的な確認事項を土台にしてまとめたもので、総論・村の概要・基本構想・基木計画・実施計画の五つの章に編成されているが、その全文を紹介することは不可能なので、第三章の基本構想までの概要にとどめる。
 先ず第一章の総論では、目的・性格及び計画期間についてつぎのようにのべている。
 計画策定の目的 近年社会経済の情勢は著しく変動し、いわゆる大都市における過密の問題と併行して後進地域の過疎の問題が大きくクローズアップされている。過疎地域にあっては経済活動が衰退し、教育・医療・消防等の生活基盤の維持さえも困難をきたすようになっている。
 このような情勢のもとで社会基盤施設の充実を図り、産業基盤を整備しつつ、生活環境対策等の社会経済情勢の推移とともに、新たに要請される諸々の施策を推進するためには、相互に調和のとれた施策が要求され、ここに行政の総合的、かつ計画的な運営が必要となってくる。本計画は、長期的・総合的な視野にたった美川村の開発、振興の機軸を明らかにし、住民・民間団体の協力のもとに、村ぐるみで明るく住みよい村を建設することを目的とする。
 計画の性格 この計画は、国・県の長期開発計画との調整をはかりつつ美川村の社会経済・自然等の現象を考慮し、産業構造・経済規模を想定しながら、将来の目標・発展の方向づけをおこなったもので、本村行財政運営の根幹となるべきものである。情勢の変動により、計画内容が実情にマッチしなくなったときは、必要に応じ改訂して弾力的な運用をはかる。
 計画の構成および計画期間 基本構想は、村の将来の目標と目標達成のための基本的施策を示したものである。計画期間は、昭和四八年度を基準年次とし、昭和五七年度までの一〇年間とする。
 基本計画は、基本構想実現のための根幹となる事業計画を示したものであり、期間は昭和四八年度から昭和五二年度までの五年間とする。
 実施計画は、基本計画を具体化するもので、根幹事業の実施年次計画を定めたものであり、計画期間は三ヶ年とし、毎年度向こう三ヶ年を基幹とするローリング方式とする。
 第二章村の概要においては、いわゆる現状と問題点を徹底的にさらけ出し、その事実を認識し、第三章基本構想樹立のふみ台とした。
 第三章の基本構想は、美川村の将来像とその実現手段である施策の大綱からなる。そして、本構想は、地方自治法第二条第五項の規定により、昭和四七年六月一〇日(第一一九回定例議会)に議決されたものである。将来像のなかでは、『大師と伝説とゲレンデと、ヤングからオールドに愛される村』をキャッチフレーズに、四国霊場第四十五番札所岩屋寺周辺と、赤蔵ヶ池・猿楽をふくめる一帯、そして大川嶺・四国カルストを拠点とした自然保護と調和のとれた総合的開発を完成して、広域観光時代にふさわしい四国の屋根における雄大なスケールの素晴らしい観光レクリエーション基地として諸人に愛される村になろうとしている。
 施策の大綱としては、先ず第一に基礎的条件の整備として、生活圏を設定して合理的な施設配置をおこない、土地利用計画を樹て、水資源の開発をおこなういっぽう、交通通信網の整備とともに、上浮穴郡(第二次生活圏)共同による常備消防の設置など、いわゆる消防防災システムの確立などをあげている。
 つぎに、住宅・水道・清掃施設・公園・自然保護などを含めた生活環境の整備にふれ、第三に保健医療の充実、第四は社会福祉充実のための施策として、児童福祉・老人福祉・心身障害者福祉・母子福祉などのいっそうの強化をはかり、第五として全人教育・生涯教育の実施によって教育文化の向上をねらっている。さらに産業の振興を第六でとりあげている。まず農業においては、自立経営の可能性と限界を見極めつつ、農家の安定成長をはかるため、専業農家の育成・兼業農家の保護と離農転職者の援助、都会人の希望に応じて農村生活を提供できる観光農業の振興、そして広域農業化の推進である。林業は新建材に対抗するため、コストダウンした良材産出、その対策として林道ネットワークの整備・団地化・建築様式の変化に対処しうるシステム化、交換分合等による合理化・作業の機械化・協業化、さらには林業団体の広域合併による組織力の強化と林業金融の改善をはかりながら、長期的な視点から計画的培養を推進するいっぽう、花木、椎茸など観光に結びついた林産物の振興をはかりたいとしている。さらに商工業・観光におよんでいるが、人間疎外の大都市から自然を求めて訪れるひとびとに、安らぎをあたえる観光農林業の開発をめざしている。最後に、第七として、行財政の合理化のために行政事務および機構の簡素合理化・人事管理および定員管理の適正化・公務能率の向上と行政経費の節約・合理化を推進するとともに、本構想の目標達成に必要とする巨額の財源確保のために消費的経費の節減と投資的経費の増額につとめ、弾力的財政構造によって、より健全化をはかりたいと結んでいる。
 以上が概要であるが、計画はそれをつくること自体が目的でなく、それに添って行政運営が行なわれ、その目標が達成されるところに意義があるとされている。本計画の実効性を確保するためには、何よりも計画を尊重し、これに基づいて行政を執行するという姿勢と体制の整備が必要である。二〇年誌が刊行される前年が本構想実施計画の初年次であった。これからの一〇年に期待がもたれる。