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美川村二十年誌

編集顧問として

 美川村二十年誌をつくる話が具体化しているので手伝ってほしいーと新谷村長からお話を受けた。第二の人生を歩み出しているとはいえ私には学校という本務があるうえ、愛媛県編年史一〇巻の編纂も大詰に来ており他に二、三執筆中のものもあって、かなりに忙しい。しかし郷里の恩にいくらかでも報いる機会を与えていただいたことは、この上もない喜びである。出来る限りお手伝いすることを約束し、編集委員である役場吏員の方、小・中学校の先生方に集まっていただき私の原案を示してご検討を願い、執筆を分担していただいた。こうして出来上ったものは編集事務局長土居武男氏の所で整理された。私は土居氏と共に一通り原稿を見た上で一貫した統一ある村誌とするため、各執筆者の重複の部分を削り、多少の文章・字句の修正をさせていただいた。
 通覧して私は今さらのように役場事務が多岐にわたり吏員各位の多忙であることに驚いた。それはかつての役場事務等と同日の論ではない。それとこの二〇年間に新村が行ない、現に行ないつつある事業の成果に目をみはった。激しい過疎現象の中にあって村行政がいかに腐心し、その中に踏み留まって村民がいかに苦労努力しているかをまざまざと見、特に次代を荷う青年諸君が涙ぐましい苦心研究をしている姿に頭の下る思いがした。
 本書には新村二〇年の足跡が、それぞれの担当者によって活き活きと描き出されている。それは表現の巧拙などを越えた、日本経済の高度成長の中を生き抜く山村の力強い現代史である。
 私としては短期間ではあったが村民の一人となり、土居事務局長をお助けして全巻にわたり関与させていただき、よい思い出となった。その間、新谷村長・山下助役・長岡収入役はじめ吏員各位が私に寄せられたご厚意に深くお礼を申し上げたい。特に土居武男氏の温いお心遣いは忘れられない。この書が今後の村政に役立ち、村民生活の指針となり村の発展に寄与することを確信して、ご挨拶としたい。
    昭和五〇年二月
                          愛媛県史編纂委員  伊  藤  義  一