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面河村誌

(二) 籌 木

 籌木とは用便(大便)の際、尻をぬぐう木片で、またの名を掻木(この地方では落とし木)ともいった。これは日本中に通じた用語である。
 幅約三センチ、長さ約一五センチほどの薄い木片、樅・杉などの柾目のよい材料を手で割って作るのである。便所に備え付けの木箱などに入れて置き、用便が終わると、この木片で要領よくふくのである。用済みのものは別の竹篭などに入れて、それを集落で決められた所定の場所に、つまり川の洪水で流れるような所に捨てるのである。便壺の中に落とさないのは、下肥はくみ上げて、畑の肥料にするからである。
 これは、紙のない時代の生活の知恵である。今考えるとずいぶんと乱暴なように思われるが、決して痔にもならなかった。この地方で紙を使用するようになったのは、昭和二十年以降である。紙のない時代の一つの暮らしの工夫である。