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面河村誌

(二) 亀 原

 関門から約一キロ、標高六八二メートルのところに、亀原がある。見上げる大絶璧、そのところどころに、ケイビラン・セキコク・チャボツメレンゲ・ウチョウランのような小植物、コバノトウリコ・クロソヨゴ・ヒノキ・ミヤママタタビなどが見られる。また、ミズゴケ・シシラン・イワヒバの類が、よく茂って、岩壁にいっそうの風致を添えている。岩壁に張り付いて、数十年かけて生長するといわれるイワタケは、食用となり、独特の珍味として有名である。
 ベニヤマザクラ(オオヤマザクラ)は、北海道・東北地方に咲く北方系のサクラで、その花は、ほんのりと赤く、見る人の心をひきつける。自生して、しかも毎年花を咲かす。ベニヤマザクラは、石鎚の裏山、面河山では、亀原の一本だけといわれている。ベニヤマザクラは、石鎚育ち、よそ者ではなく、植生混乱の心配はない。面河の景観を彩るのに最適の木、きっと自然環境復元と美化に役だつであろう。
 しかし、亀原のこの桜も既に老木、なんとかして、いつまでも、優雅な花を咲かせてやりたいものである。
 亀原の近くの蓬来渓は、清流に照りはえる紅葉のたいへん美しい所である。ここで、故牧野博士は、マムシグサによく似た草で、葉一枚のオモゴテンナンショウを見つけられた。