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面河村誌

第四章 植 物

 面河村には、関西第一の高峰石鎚山(一九八二メートル)をはじめ、二の森・堂ヶ森・石墨山などの、高い山々を控えている。
 そのため、木村の植物の垂直分布は、低地帯、すなわち、常緑広葉樹帯から、亜高山帯、すなわち、針葉樹帯にまで及んでいる。
 また、面河渓などの優れた渓谷が多く、複雑に入り込んだ地形や気象条件により、水平分布は、暖帯性のものから温帯性のものまで見られ、その種類は極めて多く、植物の宝庫といっても、決して過言ではない。
    石鎚と他地域との植物の比較
  石 鎚 山    約一一七〇種
  面 河 渓    約 五一〇種
  愛 媛 県    約二〇〇〇種
  日   本    約 八五〇種
 また石鎚は、垂直分布から見ると、シラベ・ダケカンバなどの亜寒帯の木が多く針葉樹帯に入る。
 ところが、この石鎚連峰が、日本アルプスなどの、高山帯(寒帯)の灌木帯よりはるかに低いにかかわらず石鎚山頂付近には、高山帯にしか見られないコケモモ・ツガザクラ・キバナコマノツメなどの純高山植物が見られることは、植物分布上からも貴重な問題とされている。
 これは、前世界の第三期から、第四期にかけて、北半球が氷河で覆われ、気候が寒冷であった時、北方の植物は南方に、高山植物は低地にと下って生活していたためである。この寒い気候が回復して温暖になると、これらの植物は、しだいに故郷へと帰っていった。その際、石鎚山のような、二〇〇〇メートルより低い山でも、特に断崖絶璧や急斜面・砂礫地・風雪の強いところなどの特殊な地形の地には、樹木が育ちにくいから小さな北方植物や高山植物が取り残され現在までも生活するようになったと、考えられている。

植物の垂直分布

植物の垂直分布