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久万町誌

三 産業の振興

 合併以来、豊かな町をめざして、懸命に努力して参りました。その中心は農林業の振興であります。
 今日の農林業をとりまく環境は、きわめて厳しいものがあります。しかしながら、町の活性化の基本は、いかなる時代の変化があろうとも、農林業の振興をおいてほかにはないと確信しています。
 農業の振興は、まず土地基盤の整備からと、水田圃場整備に取り組み、あらゆる障害を克服した農家の努力により、可能な面積の八〇%の整備が完了いたしました。その結果、かつては山村の稲単作農業だったのが、今日では新鮮な夏秋野菜の生産地としてよみがえり、阪神市場で高く評価されるまでに成長発展いたしました。これは農協や普及所の皆様の熱心なご指導と、農家の方々のたゆみないご努力の賜であり、心より感謝いたしております。
 近年の厳しい農業情勢の中、特に生産性の向上と構造政策推進上不利な条件をかかえている山間地においては、地域の特性を生かした農業の確立と地域資源の効率的な利活用により、活性化を図ることが緊要であります。このためには、土地利用の高度化と組織の強化を図り、共同出荷や機械の共同利用、更には高度な技術の導入等による、付加価値の高い農業の振興を図ることによって、消費者のニーズにマッチした需要創造型農業に取り組み、売れる農業をめざします。
 次に林業については、古来より日本は『木の文化の国』と言われ、経済・社会・文化のあらゆる分野にわたって、広く日本人の生活の中に溶け込んできました。しかるに戦後の政策による木離れと、外材の輸入や代替材の進出により、林業はまさに崩壊の危機に直面していることは、何人も否定できません。しかし、今日、長期的には、海外資源の減少や原木の輸出規制等の動きにみられるように、外材に不透明感が生じており、国産材の時代が到来すると予想されております。
 久万町は木にこだわり続け、木と共に歩んできた歴史があります。町の総面積の八四%は森林であります。この資源の活用・活性化こそ、町づくりの最大課題と認識しています。合併以来、先輩各位のご努力により、人工造林率は全国一を誇り、優良木生産への努力は高い評価を受けております。今年(平成元年七月)は『ふるさとの森事業』の成果と合わせて、緑化功労団体として、内閣総理大臣賞を受賞いたしました。林業家諸兄姉の今日までのご苦労に感謝しています。
 今後の林業振興は、需要の拡大にあります。川上から川下までが一体となった国産材の低コスト化と、安定供給体制づくりが課題であります。一般産業と同じく、販路の確保と需要拡大に血のにじむような改革・改善の努力が必要と思います。木材加工施設の一層の充実と、製品センターの開設等の流通対策を積極的に進めるとともに、地域林業の担い手対策に勇敢に取り組み、林家が安心して林業にいそしむことのできる体制づくりを進めます。