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久万町誌

5 老人福祉

 人口の高齢化は、公衆衛生、医学の進歩、生活環境の改善などによって急激に増加している。老人福祉問題として顕在化してきた背景には、このような人口構造の高齢化や、平均寿命の延長などに伴う老人人口の増加がある。また、時代の流れと社会生活の変化に伴って、世帯の核家族化が進み扶養意識が減退し、老人階層が社会的に孤立化しつつある。
 古代の棄老、中世の養老から近世の敬老へと老人に対する見方は歴史的に変遷しているが、現代の老人福祉対策は、老後の生活・健康・いきがい等の増進をはかるため幅広い施策がとられている。
 老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として広く敬愛され、かつ健全で安らかな生活を保障されるものであると同時に、老人自らも、心身の健康を保持し、知識と長年つちかってきた経験を社会に役立たせる努力をするものであるとして、昭和三八年七月一一日「老人福祉法」が制定され、同年八月一日より施行された。また、昭和四一年から、「敬老の日」(九月一五日)が国民の祝日として制定された。
 最近、我が国は長寿社会が実現し、人生八〇年代を迎えた。
 六九歳以上の老齢人口は、昭和六二年に一三三二万人に達し、総人口の一〇・九%を占めるようになった。
 今後、我が国は六尺歳以上の老齢人口の大幅な増加が続き、二〇〇〇年には、二一三四万人に達し、総人口の一六・三%を占めるようになり現在の西欧諸国の人口高齢化の水準並みになる。更に二〇二〇年には三一八八万人に達し総人口の二三・六%を占め、世界一の高い高齢化社会が到来する。
 県下では既に老齢人口は昭和六三年に一四%に達し、上浮穴郡は平成元年四月一日で四五六六人で高齢化率は二一・三%で郡部では一位になっている。久万町は、人口八三一八人、六五歳以上の人口は、一七七一人で比率は二一・三%で、既に国での昭和八五~九〇年代の高齢時代に突入している。
 したがって要援護老人も年々増加している。町内でもひとり暮らしの老人は一四九名、ねたきり老人二一人、虚弱老人在宅者は八名になっている。
  ア 今後の老人福祉対策の方向
 高齢者の増加、核家族化、女性の社会進出、扶養意識の変化等により、家庭の介護能力は、低下してきていることから、今後、在宅の介護が困難な老人を対象に施設の整備充実を図るとともに在宅の高齢者に対する介護ニーズ等に適切に対応できる諸施策の確立を図ることが行政の最大の課題となってきた。
  イ 家庭奉仕員派遣事業
 心身の障害及び傷病等のため日常生活に支障があるおおむね六五歳以上の者がいる家庭に対して、家庭奉仕員(ホームヘルパー)を派遣して日常生活のお世話を行うことによって、老人が健全で安らかな在宅生活を送ることができるよう援助して家族の介護負担の軽減を図ることを目的としている。
 サービスの内容は、家事・介護に関することで、これからは介護に重点がおかれることになってきた。その他生活、身上に関する相談・助言となっている。派遣費用は久万町では従来から無料となっているが、将来は所得に応じた費用負担をしていただくことになろう。
 ホームヘルパーは昭和六一年度までは常勤二名であったがニーズに応じて六二年度から非常勤四名を増員して各地区ごとに配置し、自宅からの隔日勤務体勢を採用することによって効率的なサービスが提供できるようになった。
  ウ 老人日常生活用具給付事業等
 ねたきり老人やひとり暮し老人等に対し、特殊寝台等の日常生活用具を給付又は貸与することにより、日常生活の便宜を図ることを目的としている。品目は特殊寝台、マットレス、エアーパット、火災警報器等の貨与を行っている。また、ねたきり老人家庭には部屋の改築、設備の増設に伴う補助制度も県単事業として実施されることになっている。
  エ 在宅老人短期保護(ショートスティ)事業
 ねたきり老人等を介護している家族が一時的に居宅で介護が困難となった場合短期間(原則として七日以内)老人ホームに保護することによって介護家族等の負担の軽減を図り、家族の福祉の向上を図る目的で昭和六二年度から実施している。事業開始当初は啓発不足で利用者が少なかったが、次第に事業に対する理解も得て利用者が増加している。唯受入のホームが郡内に特養施設がないので松山市の施設を利用することになり不便をきたしている。
 その他、ねたきり老人等とこれを介護している家族を短期間老人ホームに入所宿泊させ、ねたきり老人等に対して日常動作訓練、介護の仕方などを行うホームケア促進事業、在宅の虚弱老人やねたきり老人を一目預かるデイ・サービス事業等、将来に向かって対応することが在宅福祉の推進に欠かすことができないものである。
  オ 高齢者サービス調整チーム
 高齢者の多様なニーズに対応し、個々の高齢者のニーズに見合う最も適切なサービスを提供するため保健・福祉、医療等に係る各種サービスを総合的に調整推進することを目的に昭和六二年度に設置された。ホームヘルパー・保健婦を中心に、保健所・県福祉課の指導を受けながら個々の老人の処遇の問題について検討が進められた。
  カ 保健・福祉、医療各種施策の総合的推進
 増大する高齢者のニーズに有効、適切に対応するため、保健・福祉、医療等の各施策の調整を図るため保健所単位で設置されている。久万保健所管内においては、高齢社会の中で、痴呆性老人対策を本会議の重要議題に位置づけ、痴呆性老人ニーズ実態調査を実施して、本格的な対策を講ずることになった。
  キ 老人クラブ
 戦後は、老後の生活を子供に頼るといった家族制度はすたれ、だんだん核家族となった。
 高齢による身体の欠陥、生活手段の喪失等は孤独を生み、経済的、精神的な不安を抱くことになる。更に、農村では若い働き手が都会へ流出し、ますます高齢化を早める結果になった。
 こうした中で、自らの老後を健全で豊かなものにするための自主的な組織で、老人クラブは昭和二五年大阪で結成され、続いて昭和二八年から東京都において実験的に始められた。久万町では昭和三二年、久万老人クラブがいち早く誕生し、次々と各地で結成された。活動内容も老人の教養の向上、ねたきり老人、老人ホームへの訪問、清掃奉仕、地域美化運動等社会奉仕活動を通じて老人の社会活動を充実し、地域社会の構成員としての役割を果たすため老人の自主的、積極的な活助の場として大きな役割を果たしている。年によって活動内容も相違するが、毎年一回の総会、年数回の役員会、講演会、研修旅行、健康講座、子供の遊び場の清掃、神社仏閥の清掃、ホーキ、ぞうきんを施設や学校へ寄贈、レクリエーション、クロッケー大会の開催など地域での活躍もめざましく、大きな期待が寄せられている。
 これら老人クラブ活動には国・県・町からの助成も一〇〇万円を越えるようになった。その他助成事業として、生きがいと創造の事業、社会参加モデル事業等組織の育成・創造活動・伝承活動・地域交流活動・生産活動が活発に行われるようになり、地域社会の構成員としての老人層の役割を果たすための老人の自主的積極的な活動の場として大きな役割を果たしてきている。
 昭和四三年四月には、久万老人クラブ、明神老人クラブ、野尻明友会、畑野川としより会、下直瀬としより会、上直瀬としより会、露峰老松会、二名明生会等八老人クラブ会員数九二九名であったが、その後、高齢化時代を迎え、会員数も増加し、より地域に密着した活動が活発化して、クラブ部数も増加し、現在一六クラブになった。また会員の中でも女性の数が男性を上廻り、昭和六二年度には、各クラブの中に婦人部が結成され、婦人ならではの活動も行われている。町単位ではこれらを統括する久万町老人クラブ連合会を結成している。
  ク 敬 老 会
 久万町の敬老会は、公民館区域を単位として、各地域に合った行事を実施している。地域婦人会、青年団、公民館が中心となり、としよりのための一日を設けているが地域によって行事の日が異なっている。
 川瀬・明神地区では四月二九日(昭和天皇誕生日)とし、上・下直瀬、上・下畑野川の各公民館、明神は明神小学校講堂で、久万地区は、久万が町民館、野尻が同公民館で、父二峰地区では、二名、露峰、父野川、落合の各公民館で九月一五日に行うのが習償になっている。町では敬老会のため七五歳以上のとしより一人に対して、平成元年度は一人当たり一五○○円を補助している。久万町及び久万町社会福祉協議会では毎年高齢者に対して家庭を訪問して記念品を贈り長寿を祝っている。

福祉年金額の改正経過

福祉年金額の改正経過


福祉年金受給者状況

福祉年金受給者状況


我が国の総人口に占める65歳以上人口比率の推移

我が国の総人口に占める65歳以上人口比率の推移


本県の総人口に占める65歳以上人口比率の推移

本県の総人口に占める65歳以上人口比率の推移


上浮穴郡町村別老人人口の推移

上浮穴郡町村別老人人口の推移


老齢人口比率(平成元、4、1高齢者福祉課調)

老齢人口比率(平成元、4、1高齢者福祉課調)


要援護老人の状況調(平成元年4月1日) 1

要援護老人の状況調(平成元年4月1日) 1


要援護老人の状況調(平成元年4月1日) 2

要援護老人の状況調(平成元年4月1日) 2


痴呆性老人ニーズ実態調査集計

痴呆性老人ニーズ実態調査集計


久万町老人クラブ(平成元年3月)

久万町老人クラブ(平成元年3月)