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久万町誌

1 久万実業懇談会

 明治三〇年六月一日に設立されたこの会は、久万実業の改善、進歩、発展のため、政党政派の異同、職業のいかんを問わず、当町在住者をもって組織され、政党政派の外に立ち、地方の範として実業のことをはじめ、地方におけるあらゆる公共事業のために、利害得失を度外視して研究討議し合い、あるいは当事者に意見を陳述するなどのことを目的に設立された、久万実業界中心層の会であった。
 この会は、大正一三年七月九日の総会の席上で、久万実業倶楽部を吸収合併し、組織内容を変更し、名称を久万商工会と改称して、久万実業懇談会は解散した。
  ア 組織内容
 名  称 久万実業懇談会
 地  区 久万町の区域(旧久万町のこと)
 役  員 会長一名、副会長一名、収入役一名、理事八名、計一一名
 役員任期 一か年(明治四四年度より二か年に改正される)
 事業年度 毎年六月一日より翌年五月三一日まで
 会 員 数 三一名
 会  費 毎月五銭(大正六年六月より毎月一〇銭となる)
 事業所所在地 久万銀行内
 歴代会長 初代 桧垣  伸 
      二代 船田 源松 
      三代 佐伯祐三郎 
      四代 二宮伊十郎 
      五代 佐伯祐三郎  
  イ 事業内容
 共同大売出し(中元・年末)・営業税対策・優良店員表彰・競馬会開催・展示会・陳情等
  ウ 事業実績(久万実業懇談会議事録抜粋)
 ○明治四二年一二月六日 臨時総会
  ① 当町へ火葬場設置の件をはかりしに設立は希望なるも町設として一般寄付をなさざること。
  ② 明年より旧暦廃止につき、新年祝、其他一般、陽暦励行のこと。
  ③ 会員白石格氏より町内景気添の為、内子地方の例を習ひ、七夕竹を門に出すもよからんと言う事に就いて賛成者多数あり。
  ④ 会長より左の諸件に就いて懇諭あり
    ・大祭日には国旗を立てる様励行せられたき事
    ・戊申詔書に就ては平常一挙手にも留意あって各自其実を挙げられん事を
    ・新年門松には可成新松を用ひざる様
    ・氏神祭礼定日変更を其筋へ交渉の事
 〇明治四二年一二月一一日 役員会
  左記印刷の上、久万町全所へ配布せり。
  一、一月一日 休業 二日売始め
  一、七月九日・一〇日 盆市 一二月二三日・二四日 牛市
  一、取引日 普通取引 毎月末日
    大取引  七月一三日・一二月三一日
  一、祝日・祭日・休日
    一月一、二、三日(年始) 五日(新年宴会) 七日(七草節句)
    一五日(七五三) 一六日(藪入) 三〇日(孝明天皇祭)
    二月一一日(紀元節)
    三月三日(雛祭) 一〇日(陸軍記念日) 二〇日(春季皇霊祭)
    四月三日(神武天皇祭)
    五月九日(端午節句) 二七日(海軍記念日)
    七月七日(七夕節句) 一四・五日(盆) 一六日(藪入)
    九月九日(菊節句) 二〇日(秋季皇霊祭)
    一〇月一七日(神嘗祭)
    一一月三日(天長節) 二三日(新嘗祭)
  一、奉公人出替日
    一月一六日・七月一六日
 ○大正六年五月八日 役員会
  久万町役場上棟式の件は左の如く協議決定す。
  一、上棟式を来る五月一八日挙行の事。
  一、町長撰案せる案内先承認の件(七拾余名)
  一、余興は久万実業倶楽部に一任し、種類及び費用金額次の通り。
    昼間 マラソン競争 費用八円
    夜間 イルミネーション、作り物又は煙火、費用一五円
    出金方法
         拾円 町役場より支出
         拾円 懇談会より寄附
         四円 実業倶楽部より寄附
 ○大正六年一一月一八日 役員会
  
   当町に荷車及牛馬の駐車場なき甚だ差支あり。且つ近来警察官の取締厳なるより忽ち困難の向不少。依て町営又は私営の方法により急施を要するものと認むるを以て町長帰町を待ち、今夜会合の会員一同出頭の上、同旨の意見を叩き、尚本会意のある所を歴練することとす。
 ○大正七年一二月一○日 役員公
  一、当町小学校と実業補習学校併置あり。当町内一般子弟の補習教育実行中のところ、商家の店員の出席少く学校長よりも、勧誘申来りたるに付、各商店へ出席方勧誘状配布すると同時に、学校へ向いて職員の戸別訪問を照会する事とせり。
  一、店員表彰者二名を商工連合会へ推選す。
 久万実業懇談会議事録(既刊久万町誌より抜粋)をみてもわかるように、商工業関係者の集まりだけではなく、久万町の政治動向そのものにも関与する幅広い活動を展開している。このことは、会員が久万実業界中心層の人々であったことからもうなずけるものである。