データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

久万町誌

一一 久万町農業の実態と展望

 久万町の農業は、地帯区分からみれば山村に属し、気温が低く(年平均一二・六度C)、降雨量が多く(二二〇〇㍉から二三〇〇㍉)、耕地は、傾斜の多い棚田、段畑がその大半を占め、自然的に劣悪な条件によって作目選定にも限界があり、歴史的にも経営の零細性と、過剰な労働力の投下に悩み続けてきた農業であったといえよう。
 しかし、山村一般からみれば耕地面積に対して水田の割合は比較的高いが、久万町の一戸当たりの経営耕地面積は全国平均を下回り六三㌃で、農業経営のみで自立できる農家は少ない。したがって、炭焼きや林業、特用林産収入などの組合せによる農林一体の農業ともいえるし、農林互いに補完的関係を保って経営されてきたことがこの地方の特色である。
 そのことを具体的に示すのは、久万町の農林業経営階層区分表をみることによって明らかとなろう。
 農家戸数の推移をみると、昭和三五年の二〇七三戸を一〇〇とすると六〇年の一三三四戸は六四の率となり、五年ごとではあるが約八%の減少となり、年間約二〇戸から三〇戸の農家が消えていることになる。
 久万町の農家のうち約八〇%は山林を保有し、農林業の相補的な収益の確保、農業と林業の組み合せによる年間労働の配分を合理化し、就労の機会を増大させ所得の増加に役立ててきたことが特徴的であり、農林一体の町づくりが一貫して進められた。
 合併以降、久万町は土地基盤整備、農道整備に積極的投資を行ってきた。昭和四〇年からの構造改善事業が、この基盤整備に重点を置いた事も、地域の土地条件からみても必然的な方策であったといえる。更に、あらゆる事業を土地基盤の整備に向けてきたことも表で示した実績のとおり久万町の方針であった。
 圃場整備については現在も県営で行われているが、あと一、二年で整備可能な圃場は事業を完了することになろう。早くから着手し、長年かけて進めてきた土地整備施策は、水田に投入する作業労働日数の削減につながり、大型機械の導入によって作業の合理化を図ることになった。
 更に、夏の冷涼な気象条件を生かした高原野菜を水田栽培に下して良質な高原野菜の産地形成が実現したものである。現在では夏秋トマト(五三、六、二六)、夏秋キャベツ(五七、二、一八)、夏大根(六一、二、二四)の三品目が国の指定産地となっており、更に夏秋ピーマンも産地指定を受ける準備が進められており、米依存から野菜生産へと生産者の意欲も高まっているが、生産従事者の高齢化は急速に進み、六〇歳以上の維営主が増加しているところから、経営規模の拡大は次第に困難が予想される。久万町の農業の生産性は全国平均よりも愛媛県平均よりも高い伸びを示している。これは収益性の高い高原野菜の栽培の伸びと選果施設の整備による厳選及び系統出荷の増加、流通機構の整備等によるものと考えられる。
 昭和六三年度の久万農協総会資料による主要農作物の販売実績は表のとおりである。
 我が国の農産物は、世界最大の輸入国である。特に穀物の自給率三〇㌫は他の国と比較してもかなり低い水準にあるといえる。しかし、輸入農産物に市場を奪われ、国内では農産物のことごとくが過剰基調にあり、国内市場は縮小の傾向となっている。
 農産物一二品目について、ガット(関税貿易一般協定)裁定にはわが国農業の保護措置を揺るがしかねないものが盛られており、牛肉、オレンジから更にはコメヘと続く自由化圧力に対して、今までのような守りの対応では活路を開くことはできない。創意工夫や合理化の努力によって国際競争力を高める攻めの姿勢へ転換を図ることが求められている。すなわち、農業の生産性の向上をはかり国際化時代にふさわしい競争力を強め、産業として自立できる足腰の強い農業、活力ある農村づくりが課題である。
 いま、農山村では、過疎化、高齢化の問題と併せて農地の荒廃など様々な問題をかかえているが、基盤整備の進んだ圃場を集落ぐるみ(農家非農家の連携による集落営農システム)で活用し、農地の高度利用、作物の転作用地化、機械の共同利用、農作業の受委託など組織的な取り組みによって低コスト、高生産の地域複合農業を目指すことが必要であろう。
 また、高齢者の農業参入あるいは、都市からの新規参入者を加えた活力ある農村づくりへの取り組みもさけられない方策ではないだろうか。
 久万高原では水田の活用を有効転作に誘導することによって、地域営農組織の強化を図ることをねらって、水稲互助制度、地域営農加算の確保、転作集団化によって農家所得の増大、農村の連携強化に努めている。
 農村の景観保全と環境整備に努め、快適な生活空間を創造しながら農村文化を見直し都市と農村の交流を図り、農山村の持つ広域的機能を発信したいと考える。
 若者の定住対策には、研修の場を与え、若者の意欲と自覚に基づき、住みよい町づくりへの条件づくりが必要であり幅広い角度から共に考え、行動実現に結びつけたいものである。
 国、県の諸施策とも連携し、久万町としての過去の取り組み、新しい方向へ積極的な研究と実践に努めたい。

農家専業別数(農林業センサス)

農家専業別数(農林業センサス)


久万町耕地経営階層区分

久万町耕地経営階層区分


久万町林地所有区分

久万町林地所有区分


久万町水田(畑地)圃場整備状況

久万町水田(畑地)圃場整備状況


農業粗生産額・生産農業所得及び生産性(昭和63年分)

農業粗生産額・生産農業所得及び生産性(昭和63年分)


昭和63年度主要農産物の販売実績(久万農協総会資料)

昭和63年度主要農産物の販売実績(久万農協総会資料)