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久万町誌

2 養 蚕

 「松山藩旧会所日記」によると、久万地方の養蚕は、寛政九年(一七九七)松山藩が久万山に養蚕を奨励し、久万町村西村屋六右衛門、宇都宮兵助が桑植方御用係を命じられたとある。
 その後、寛政年代に菅生村、川瀬村、父二峰村で飼育が始められた。伊予蚕業沿革史(村上是哉著)には、東明神村船田儀左衛門が、天保五年(一八三四)養蚕家として氏名か記録されている。しかし、養蚕も幕末における社会の混乱で衰微の一途をたどったようである。これについて次のような記録がある。
  「幕末、内外多事にして殖産興業の道を講ずることも絶えてなく、蚕業のごときも自ら山間僻陬の地に村娘野媼の娯楽用として僅かに余喘を保つ状態にすぎなかった。」
 明治三八年三月一五日、高橋精一郎により、久万山蚕種製造合資会社が設立され、明治四○年明神村製糸組合、同四四年、久万製糸組合などが設立され、父二峰を中心として飼養は盛んであったが、支那事変、第二次世界大戦による輸出の減少と、食糧の増産に主力を注がなければならなくなったため減少した。戦後は、わずかに二戸の養蚕家に止まっていたが、近年国民経済の向上にともない、合成繊維にあき、絹本来の需要が信びたため、久万町においても、昭和四〇年より重点作目の一つとして、農協が中心となり増殖普及に努め、二名由良野に養蚕労力の省力化と他部門に対する労力配分から、稚蚕共同飼育所を設置して、一齢から三齢まで飼育し、以後各農佃ぜ嘔り嘔毫粉搦家に配布飼養を行い、生産された「マユ」はすべて農協内養蚕組合を通じ、製糸会社へと契約売買を行っている。
 昭和四五年度は、久万農協が事業主体となって父二峰の由良野に二㌶の桑園と稚蚕共同飼育場を、東明神へは壮蚕大型飼育場を設置した。
 昭和四八年には直瀬のサラゲ団地に一〇㌶の桑園の造成などによって、近代的設備を持つ専業農家の育成など繭生産の改善に大きな指標となった。
 昭和五三年三月、近畿、中国、四国地方繭増産推進協議会主催により、生産性の向上と養蚕所得の増大を目的とする第一一回繭生産性コンクール(組合の部)で最優秀となり、久万農協養蚕部久万支部(支部長小西忠利)が見事「農林大臣賞」を受賞した。審査の対象は、養蚕部組織活動が活発であり、収益が増大し、一戸当たり五五㌃、繭量産五六㌔㌘と経営規模が拡大され、桑園管理が行き届いており一〇㌃当たり一一九㌔㌘の収繭量と向上していることなどが高く評価されたものである。
 また、愛媛県蚕繭能率経営競技会(県、県蚕糸農協連、愛媛新聞社共催)が毎年開かれ、全国的にも名高い「伊予生糸」を守り、養蚕農家の表彰等を行い意欲高揚を図っているが、久万農協養蚕部の中でも養蚕農家の多い、桑園面積の多い久万、明神、直瀬の支部では団体賞、個人賞を受けてこられた。
 ○中予稚蚕共同飼育所
 養蚕の合理化と生産コストの低減をはかるために上浮穴郡五か町村、川内町、重信町、広田村の八か町村、五農協では、愛媛県中予蚕業技術指導所の指導も受けながら中予蚕業振興協議会(会長河野 修久万町長)を組織し、人工飼料育による「中予稚蚕共同飼育所」を久万町大字下野尻に、昭和五八年三月二五日に竣工させた。
 この施設の規模は、敷地面積が二〇五三平方㍍、建物面積が五〇九平方㍍で、人工飼料育ができるのはA室 二五〇箱、B室 五〇〇箱で、最高七五〇箱の稚蚕飼育が可能である。
 人工飼料育は、一~二齢まで一〇日間、三齢までは一四日間の稚蚕を育て、各養蚕農家に配蚕するものである。
 飼育所建築にかかる総事業費は一億円、うち国庫補助金三、三三三万三〇〇〇円、県補助金一、六六六万七〇〇〇円、各町村負担二○○○万円、各農協負担三〇〇〇万円であった。
 中予稚蚕共同飼育所の運営は、久万町特別会計を設け、稚蚕販売収入でまかなっている。一箱一、二齢四五○○円、三齢九〇〇〇円である。
 生糸需要の好調な伸びに反して、まゆ生産は減少が続き、現状維持が困難な状況にある。その原因として考えられるのは、安い外国産まゆの輸入による価格の低下、更に追いうちをかけるように養蚕農家の高齢化に伴う意欲の低下が考えられる。
 良質のまゆ生産を行い「伊予生糸」の銘柄を守るために老朽桑園の改植、有機質の増投、基盤整備による省力化を進め経営の安定を図る努力がなされている。

松山における市価

松山における市価


昭和42年久万生産数量(kg)(奨励より3年目)桑園面積 46、15ha

昭和42年久万生産数量(kg)(奨励より3年目)桑園面積 46、15ha


蚕繭飼育生産状況

蚕繭飼育生産状況


稚蚕飼育所の規模 養蚕対策事業

稚蚕飼育所の規模 養蚕対策事業


昭和37年繭価格協定

昭和37年繭価格協定


養蚕農家掃立量(農林業センサス)

養蚕農家掃立量(農林業センサス)


基準糸価と繭代金

基準糸価と繭代金


昭和62、63年 久万町全蚕養蚕実績

昭和62、63年 久万町全蚕養蚕実績


近年春蚕の推移

近年春蚕の推移


繭生産実績

繭生産実績