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久万町誌

2 幽谷上人入定の地

 下畑野川の上田という集落に、幽谷上人と呼ばれていたお上人様が、入定したと伝えられる所がある。
 幽谷上人という人は、伊予郡松前町に生まれ、宇和島の伊方にある阿弥陀寺で、浄土宗の修行をつみ、この地に来て阿弥陀寺を建立し、人々を導き、浄土宗を布教した上人である。
 当時の上畑野川村と下畑野川村には、禅宗のお寺で定徳寺と定禅寺、それに善通寺の三か寺があった。その中で浄土教を説き、寛永四年(一六二七)に阿弥陀寺を建立した。
 寛永八年(一六三一)一一月二日、自ら阿弥陀寺の奥の院の地下を掘り、その中で入定した。檀信徒は二一日間、毎日地の底のような所で、上人がたたく鐘の音を聞いたという。入定後奥の院は「お霊屋」といって尊崇され、裸足参り以外は許されなかったという。
 その後は無住となり、荒れるにまかせていたので、大正一五年(一九二六)に建物を取りこわし、その跡に阿弥陀如来の仏像を安置する小さいお堂を建て、今日に至っている。