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久万町誌

一 伊予方言のあらまし

 愛媛県下の大部分は古くから伊予の国としての政治、生活文化の単位を形造っていた。しかし、この単位内の生活的結びつきは必ずしも緊密ではなく、対外的な交渉や接触も、(讃岐、土佐、あるいは九州、中国地方との)地域によって事情を異にしていた。内部的にも諸藩の分立や生活圏の対立が続いていたので、地域の生活語の現状は単一ではなかった。したがって愛媛を一つの方言区画とし、愛媛ないし伊予方言を設定することはむずかしい。愛媛の方言とは単に愛媛県下の生活語というに過ぎない。
 方言区画の上では、普通愛媛は高知・徳島・香川とともに四国地方の地域とされている。四国方言の地域は阿波・讃岐・伊予・土佐の大部分をさすが、地理上行政上の区画と一致するわけではない。行政上の四国地方の方言区画は、特に阿讃土方言・渭南方言・瀬戸内海島嶼方言とするのがよいと思う。渭南方言は九州東北部とともに乙種(東京型)アクセントに属し、語法や語彙にも九州方言系のものが多い。
 更に愛媛県を便宜上一区画として、その内での下位の方言対立を考えると次のようになる。
 一、東中予方言 いわゆる四国方言と同一系統で、東予方言と中予方言とに分かれる。
 二、南予方言  四国西南部方言は、高知県西南部とも共通で、九州方言と同一系またはその変形であり、大洲方言と宇和方言の中に渭南方言を分けることかできる。
 三、瀬戸内海島嶼方言 四国本土沿いの二、三の島を除いた島々の方言は、中国方言(山陽方言)と同一系統である。
 中予の内、小田町・中山町・広田村は、いずれも肱川の支流沿いの地域であり、地勢上も喜多郡に接近しているので大洲方言に近い。
 面河川流域は高知の仁淀川の上流地域にあたり、土佐方言が入っているといえる。

方言について

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