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久万町誌

11 エンマの又平

 久万に又平という馬方がおりました。その又平が病気で死出の旅に立ち、ぶらぶらと行きよったらふたまたになったわかれ道がありました。
そこには「右は地獄、左は極楽」と書いてあるので、又平は悪気を出して右へ行きました。すると、本物の地獄へきてしもうて、これは残念と思ったがしかたがありません。
 ある日、又平は、エンマに魚をとりに行かんかと誘い、又平はおもしろそうに魚をとって見せました。
「エンマはん、あんたもとってみんかな。着物が汚れるからわしのとかえなさい」
と言って、着かえさしました。
 そして、エンマが川の中で魚をとっとるすきに又平は走ってもんて、鬼どもに、
「又平は川で魚をとっとるけん、連れてもんて火あぶりにせよ」
と命令しました。すると鬼たちは急いで川へ行って、
「又平、なにをしとるか」
といって、わしはエンマだというても聞かず、火あぶりにしてしまいました。それからのエンマは久万の又平だそうな。