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久万町誌

8 凧屋八兵衛

 とんと昔もあったそうな。
 年から年中、凧張りをして暮らしている八兵衛と言う男かおりました。ところで、どこで金をくめんしたのか八兵衛は伊勢参りに行きました。
 伊勢の宿で、大阪の住友の旦那と知り合いになりました。住友というのは大した長者のことですから、八兵衛はおのれも負けてはならじと、
「わしの村の家はみんなわしの持ち物じゃ」
とほらを吹いておきました。住友の旦那がそれを聞いてびっくりして
「それでは、わしの娘をもろうてくれるか」
と頼みました。八兵衛は、
「よっしゃ、引き受けた」
と言いました。八兵衛は旦那と別れて村へ帰りましたが、帰るとすぐに庄屋の家に行きました。
「庄屋の旦那、庄屋の旦那。お頼みがござる」
と言えば、庄屋は、
「何の用事か」
と問い返してくれました。八兵衛は伊勢の宿で住友の旦那と約束したことの、一部始終を話しました。
 庄屋は、そこで、村中の家に凧屋八兵衛という名前をつけてくれました。やがて住友の方から便りがあって、いよいよ住友の娘が八兵衛のところへくることになりました。どの家も人が住んでいるので、人の住まぬ幽霊屋敷を借りて、その家で祝言することになりました。
 庄屋どのや村の人も祝言の席にすわって、いっしょに祝いました。みんなが帰ってから夜中になって、庭で火がちろちろと燃えました。
 八兵衛は、娘に、
「せっかくきてくれたのに、この屋敷にはあやかしがいるけにおられん」
と言いました。娘は、
「あれは金の石じゃ」
と教えました。そこで掘ってみると、中からたくさんの金の石が出たので、八兵衛は大金持ちとなり、名札を掛けておいた家は全部買いとるほどの身代となりました。