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久万町誌

6 猿と爺

 むかしある所に、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。
 おじいさんが山の畑へ仕事をしに行きました。畑打ちをしておりますと、木の株に猿がやってきました。そうしておじいさんの畑打ちを見ていましたが、
 「爺が畑打ちや、腰ゃびっくりしゃっくりこ」
と言って笑いました。おじいさんはいまいましくてたまりませんでしたが、こらえて畑打ちをしていますと、また、
 「爺が畑打ちゃ、腰ゃぴっくりしゃっくりこ」
と言います。おじいさんは怒って、
「猿よ、猿よ、あっちへ行けよ」
と言いましたが、猿はいつまでも、おじいさんの悪口を言います。おじいさんは、山をおりて帰ってしまいました。
 あくる日になって、おじいさんは山へとりもちを持って行きました。畑のそばの木の株に、とりもちを塗ってから仕事にかかりました。
 あんのじょう、昨日の猿が出てきました。猿はじいさんの悪口を言おうと思って木の株に腰を下ろしましたが、とりもちのために尻がくっついてしまって、離れることができません。
「じいさん、じいさん。助けてくれや」
と言いましたが、おじいさんは、昨日の仇討ちができたと思って猿を捕えました。
 猿を縄でしばって家へ持って帰り、おばあさんに、
「今夜は猿がけ汁をするきに、米を搗いてくれ」
と言いました。そうして、猿を天井からつるしておきました。おばあさんが米を搗いていますと、猿が、
「おばあさん、おばあさん、わしが手伝うて上げるきに、縄をほどいてくだされ」
と言いました。そこでおばあさんが縄をほどきますと、猿はおばあさんを臼の中へ突き入れてしまいました。猿はおばあさんの着物を着て、よい具合に化けました。おじいさんが帰ってくると、猿はおばあさんの汁を食べさせました。そうして、
「じじいが、ばあ食うた。床の下の骨見い」
とはやしながら、山へ逃げていってしまいました。