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久万町誌

2 三 坂

 「三坂馬子唄」で哀愁をそそった三坂峠も、国道三三号線の開通、その後の大改修工事の完成にともない、近代化の波が急テンポでおしよせモダンなドライブイン、展望台などの諸施設がつぎつぎにでき、昔日の面影は失われつつある。
 この峠(七二〇㍍)一帯には、トサノミツバツツジ、ノリウツギ、ウラジロノキ、アブラチヤン、ウリハダカエデ、ハイノキ、アセビなど山地性の木が多い。なお、ここの絶壁では、珍しくもコウヤマキの自生を見ることができる。
 湿地には、五月に、ハナショウブの原種、ノハナショウブの花が咲きほこるほか、トキソウ、ヌマトラノオ、ワレモコウ、オタカラコウ、サワヒヨドリ、サワオグルマ、ミズタビラコ、ゴウソ、ナルコスゲ、ミズギボウシなど、湿原性の草本が多く見られる。また、珍しいミズゴケの自生も見ることができる。
 九月になると、ひときわ背の高い、ハンカイソウの黄色い花が咲き、印象的である。
 無線中継所に至る路傍には、サワフタギ、ウグイスカグラ、ヤマヤナギ、コツクバネウツギ、ミネハハソなどの低木の類、また、その下草にはヒトリシズカ、ウツボグサ、ヒメユリ、モミジガサ、ホタルブクロ、ナツトウダイ、エビネ、アキノタムラソウ、ナベワリ、カキランなどのほか、六月の花のころには、山いっぱいにその芳香をただよわせるフクリンササユリ、晩秋になると、リンドウの花を多く見るし、珍しいタカネマンクサ、シュロソウの自生も見ることができる。なお、谷川ぞいの湿地には、イタドリ、フキ、ウド、原野にはワラビ、ゼンマイも多い。新緑のころにはこれらの山の幸を求めて歩く人影も多くなる。