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双海町誌

第八節 平成の大合併

一 概  要
 一八九〇(明治二十三)年の「郡区町村編成法」に基づき、「明治の大合併」が行われて、上灘村と下灘村が編成された。その六五年後、一九五五(昭和三十)年に、「町村合併促進法」による「昭和の大合併」があり、双海町が誕生した。それからちょうど五〇年を期限とした「市町村の合併の特例に関する法律」により、「平成の大合併」は大詰めを迎えた。
 一九六五(昭和四十)年三月二十九日、「市町村の合併の特例に関する法律」第六号で制定された合併特例法は、以後、二〇回改正され現在に至っている。
 第一条の趣旨は、次のとおりである。

「この法律は、市町村行政の広域化の要請に対応し、自主的な市町村の合併を推進し、あわせて合併市町村の建設に資するため、当分の間の措置として、市町村の合併について関係法律の特例その他の必要な措置を定めるものとする。」

 このように、市町村の合併は自主的に行うことを前提にしている。そのような自主的な合併を推進するため、合併に関する部分に限り、地方自治法や関係する法律に特別の措置を、期限つきで設けている。「昭和の大合併」は、戦後の郷土復興のため、財政的に困窮していた時期と重なっていた。「平成の大合併」も、国・県・市町村あげての公共事業を、借金を重ねながら続行したことによる深刻な財政難と重なる。
 この合併特例法は附則第二条で「この法律は(中略)平成十七年三月三十一日限りその効力を失う(後略)」となっている。


二 伊予地区一体化構想
 平成十年代に入ると、合併の最終期限(平成十七年三月三十一日)が迫ってきたため、市町村長会や議長会で、合併を議題とする機会が増えた。主なものは、「中予地区が一体となる大松山市案」「伊予市・伊予郡が合併する伊予地区案」であった。松山市は合併に消極的だった。平成十三年一月三十一日に愛媛県が発表した合併の基本パターンは後者の案であった。
 最初、広田村長が「合併せずに単独で村づくりをすすめる」と発表して話題となった。しかしその後、広田村はこれを撤回したので、基本パターンどおり、伊予地区(一市四町一村)が一体となり、一〇万人都市を目指す合併案が、市町村長会や議長会、そして両者合同の協議会で検討された。
 この協議会での討議がすすみつつあるころ、砥部町長が突然、「離脱して広田村と合併する」として会議への出席をやめたため、関係各人は説得に当たった。砥部町内からは、松山市との合併を望む人たちを中心に「町長の言動は住民無視」との批判が噴出し、町長リコール運動が発生した。町議会も巻き込み、最終的に町長選挙を実施したところ、松山市との合併を望む人たちに推された人が町長に就任したことで、砥部町の将来は決定したかにみえた。
 しかし、新町長が改めて合併案を問う住民投票を行ったところ、「広田村と合併して砥部町らしさを残す」という案が多い結果になった。一年余に及んだ砥部町の合併騒動の間は休止していた伊予地区案がこれで廃案となり、一〇万人都市構想が消え去った。広田村の「単独案」が、砥部町の「延命」を誘発した形となった。


三 一市三町での歩みと挫折
 平成十四年九月九日、砥部町・広田村欠席で、第一回「伊予地区合併懇談会」が伊予市・松前町・双海町・中山町の一市三町により開催された。その後回を重ねて、翌十五年一月十四日、任意による「伊予地区合併協議会」が設置され、二月五日に第一回任意合併協議会が開催された。会長には中村伊予市長が、副会長には三町長が就任した。二月十三日の合併協議会で、合併の方式は「対等合併」、合併の期日は「平成十七年一月一日を目標」が確認された。
 二月末には、住民を対象とした「新市建設計画策定に係るアンケート」が実施され、一市三町での七万人都市づくりは、フル稼動を始めた。合併協議会の委員は、「建設計画小委員会」ほか三つの小委員会を構成し、それぞれ専門的に検討してから、協議会で協議・決定する方法をとった。協議会場は、四市町持ち回りとなっていた。
 七月十日に本町で開催された第六回任意合併協議会で、現行の協議会を解散し、同日、「法定合併協議会」が設置され、第一回協議会が開催された。九月十一日には事務所(本庁)の位置を松前庁舎とすることを確認、九月末には「新市将来構想概要版」を全戸に配付、十月十日から管内小学校の校区別に説明会を開催、十二月八日から「新市の名称募集」を開始するなど、合併への準備は多方面にわたり進められていた。
 ところが十二月十七日、伊予市議会の全議員で構成される「伊予市合併対策特別委員会」が、多数決により合併協議会からの脱退を決定した。翌日には伊予市長・市議会議長が、県とほかの三町を訪ねて脱退の意向を伝え、十二月十九日の市議会で合併協議会からの脱退を可決した。
 この時点で、松前町を含めた飛び地合併は通常あり得ないこととなり、一年余にわたって協議された一市三町での合併は、実質上挫折することとなった。
 中山町は、伊予市と歩調を合わす構えをとり、平成十六年一月七日の臨時議会で、合併協議会脱退を可決した。
 本町は平成十六年一月六日、住民説明会を開催して、住民の意向を聴取した。それを尊重して脱退はしないまま、一市二町での合併を視野に入れつつ、松前町とともに三月三十一日、伊予地区合併協議会の廃止を決定した。


四 一市二町で合併へ
 松前町との飛地合併は通常あり得ないので、伊予市・中山町・双海町での合併が進められた。
(1) 伊予市・中山町・双海町合併協議会に関する経過
(2) 基本理念と基本政策
 新市合併協議会では、分散共生型の郷づくりを目指して、その理念と政策を次のとおり示している。(抜粋)

郷(くに)づくりの基本理念
(1)「郷(くに)」概念の設定について合併後の新しいまちづくりとは、そこに住む人々の・そこに住む人々による・そこに住む人々のための取組み=ふるさとづくりであると考えます。この伊予市・中山町・双海町において、中山間地域、沿岸地域、農村地域、住宅地域、商業市街地など、多様な特性を備えた各地域が共生する新市全域を示す概念を「郷」と呼びます。「くに」とは、細心の配慮をもって営まれる新しいまちづくりにより変化していく「ふるさと」の姿にほかなりません。
(2) 三市町の現行将来像
 伊予市:交流拠点都市
 中山町:新しい農村デザインを創造するまち 中山町
 双海町:第一次産業の振興を軸とした定住と交流のまち
(3) 郷(くに)づくりの基本理念
  「まちづくりの方向性」をまちづくりの視点と行政運営の視点とから整理統合して導き出したものを「郷(くに)づくりの基本理念」として次のとおり設定します。
  ◆ 地城の自立と活性化(地域内分権の推進)
  ◆ 多様な地域の共生(地域特性を尊重したまちづくり)
  ◆ 地域住民と行政の協働(補完性の原則に基づく連携)
  ◆ 行財政改革(情報公開と住民参画)

新市の将来像
 キーワード:自立・共生・協働・交流
 新市の将来像については、郷(くに)という概念を設定しましたが、そのまちづくりの形成過程、すなわち「郷(くに)づくりの基本理念」も併せてイメージされることが望ましく、四つのキーワードから「自立を目指す多様な地域が、交流と協働のまちづくりにより共生するふるさと」を将来像として次のとおり設定します。
     ひと・まち・自然が出会う郷(くに)


新市のまちづくりの主要施策の体系
  =新市の将来像実現に向けた基本政策=
 三市町の現行総合計画の基本政策を統合して、新市の将来像を実現するための主要施策の体系を次のとおり設定します。


(3) 新市の事務所の位置(事務の方式)
総合支所方式を基本とした新しい方式

1 主たる事務所(本庁)と地域事務所(総合支所)の設置
  管理統合機能(本庁機能)を主たる事務所に置き、旧市町を所管区域として総合支所機能を持つ「地域事務所」を設置する。

2 集中統合する事務と地域分散する事務との効果的配分
  新市の統一的な業務、全域に関わる業務、対外的な業務を本庁機能として主たる事務所へ配分する。
  住民の利便性の高い業務、参加機会が多い業務、地域的課題・需要に関する業務、現場に関わる業務を総合支所機能として地域事務所に配分する。

3 効率的な行政運営
  電算システムの活用により事務の効率化と人件費の削減、効果的な事業推進、適正な人事配置と職員資質の向上、自治基本条例の制定による参画と協働のまちづくりなど、行財政改革を推進する。


(4) 住民自治組織

 制度として住民自治を位置付ける

ア 特色ある施策の継承、住民自治意識の高揚、活力ある地域の創造のため、新市において自治基本条例を頂点とした例規体系を整備し、住民自治組織を制度化し、支援する。

イ 住民自治組織の概要
 ① 活動単位は、自治会、小学校区住民など地縁に基づくもののほか、NPOや各種グループなど特定分野において活動する団体も考えられる。
 ② 行政(地域事務所)の支援
  a 財政支援一地域振興資金(特例債)等を財源として、市が委託する事務については委託料を支払い、公益性の高いものについては補助金を支出することも検討する。
  b 人的支援:地域事務所に支援担当職員を配置する。
 ③ 住民自治組織への権能付与
   地域の住民が専ら利用する公共施設の管理、地域の人材を活用できる福祉サービスや防災、教育活動を住民自治組織に段階的に委ねる。


 住民活動の拠点(自治支援センター)を整備する

ア 自治支援センターは、まちづくり拠点(住民活動の拠点)と公民館機能(生涯学習の場)とを併せ持ち、概ね小学校区を単位として整備する。

イ 新市の一体性の確保のための住民自治組織の連絡調整組織を設け、「交流拠点施設」をその活動拠点と位置付ける。


住民自治組織が地域審議会的な役割を持つ

住民自治組織が当該地域に関する事項について地域審議会的機能を果たす。
ア 行政へ地域振興策や市事業について意見・提案をする仕組みを制度化する。
イ 行政による各種計画に関する事項の意見聴取を義務付ける制度をつくる。
ウ 自治基本条例等、例規を整備し、上記機能を制度化する。


(5) 新市建設計画
計画期間 平成十七年度~平成二十六年度
新市の事業
 事業件数   九八件
 総事業費   二〇八億七一〇五万円
   内
   国 費  四五億八六三〇万二千円
   県 費  七億四一一〇万八千円
   市 費  一五四億三〇一三万四千円
   その他  一億一三五〇万六千円
   市費のうち起債は合併特例債五一億六〇八〇万円を含めて、
 一一九億七七三〇万円を見込んでいる。

新市区域内での県営事業
 事業件数   四二件
 総事業費   九六億一〇三〇万円
   内 
   国 費  四一億四六二五万円
   県 費  四五億九三六九万三千円
   市 費  七億〇八九三万七千円
   その他  一億六一四二万円
  市費のうち起債は二億四四八〇万円を見込んでいる。


(6) 財政計画
 新市における財政計画は、歳入歳出の各項目ごとに、原則として過去の実績(推移)及び現状を参考に今後の経済情勢等を勘案し、合併後十年度間について普通会計ベースで作成したものである。
 なお、普通会計とは、各保険事業会計や下水道会計などの特別会計を除いたものをいい、この会計では、特別会計への一般会計からの充用経費についてのみ繰出金として計上している。
 なお、データは、平成十四年度までの決算額、平成十五年度決算見込み額及び三市町の平成十四年度普通会計中長期財政計画(平成二十一年度まで)を平成十六年度当初予算編成時における収支見通しにより見直ししたものを基本としている。
 建設計画等に計上された主要施策(主要事業)については、合併後において、緊急性・効果等を勘案し策定する実施計画に基づき、限られた財源を効率的・効果的に配分し、事業の実施を図っていくこととしている。


(7) 土地利用構想(口絵参照)
 新市における土地利用について六つのゾーンに分け、それぞれの地域特性を考慮した活性化策を実施し、各地域が機能を補完し合い、連携する土地利用を進める。

 シティコアゾーン
 伊予市の中心市街地を「シティコアゾーン」と位置付け、駅周辺再開発・市街地整備事業の推進、商業施設を計画的に誘導するとともに、住環境整備の推進を図ることにより、賑わいのある中心市街地の形成に努める。

 市街地形成ゾーン
 伊予市の既成市街地地区や中山町・双海町の役場周辺地区等を「市街地形成ゾーン」と位置付け、生活道路・上下水道施設、公園、文化・スポーツ施設、福祉施設など、住環境の整備を推進し、良質な住宅開発や近隣型商業施設の誘導等を図って、産業活動と自然とが調和した市街地形成を図る。

 シーサイドゾーン
 新川地区から下灘地区に至る沿岸部一帯を「シーサイドゾーン」と位置付け、新市のシンボルエリアとなるよう既存の公園・海水浴場・ビーチバレーコートの整備拡充に努めるほか、観光漁業などと連携を図ることにより、一体的な交流拠点の形成に努める。

 工業・流通ゾーン
 新産業形成適地や既成工業団地を「工業・流通ゾーン」と位置付け、周辺の住宅地・農地との調和、公害の防止に留意しながら、工業・流通団地としての基盤整備を図ることにより、優良企業の誘致、既存立地企業の支援・充実等に努める。

 農住共生ゾーン
 農山漁村地域のうち、まとまりのある集落形態を有する地区を「農住共生ゾーン」と位置付け、優良農地の確保と農業生産基盤など農業振興との調和を図りながら、生活道路、集会施設、上下水道施設、身近な公園等の整った快適な住環境づくりに努め、適地に農村工業導入地区を設定するなど、定住者の受け入れを図る。

 森林保全ゾーン
 山林地域一帯を「森林保全ゾーン」と位置付け、水源保全林・生態保全林として保全・活用を図るとともに、適地に自然環境と共生する観光レクリエーション施設や公園、遊歩道等の整備を計画的に推進する。


(8) 合併協定調印
 二〇〇四(平成十六)年十月二十八日、伊予市・中山町・双海町の合併協定調印式が伊予市で開催された。
 次の調印書には、伊予市長・中山町長・双海町長が署名調印し、立会人として列席した加戸愛媛県知事や松岡松山地方局長、泉愛媛県議会議員及び首長を除く一八人の合併協議会委員が署名している。


法定合併協議会設立までの経緯1

法定合併協議会設立までの経緯1


法定合併協議会設立までの経緯2

法定合併協議会設立までの経緯2


基礎的条件の整備

基礎的条件の整備


まちづくりの基本政策

まちづくりの基本政策


主要施策の推進

主要施策の推進


概念図

概念図


自治支援センター

自治支援センター


新市10カ年度財政計画

新市10カ年度財政計画


調印書

調印書


伊予市・中山町・双海町合併協議会委員

伊予市・中山町・双海町合併協議会委員