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双海町誌

第一節 植物

 愛媛県は、植物地理学上は暖帯林に属し、豊富な植物が生育している。本町は、山々の連なりを背にして海に面した場所にあるため、町域の至るところに多種多様な植物が生育し、繁茂している。地質と関係が深いといわれるツワブキが、海岸部全域にわたって自生しており、早春を告げる水仙もあちこちで見ることができる。
 農作物としては、米、麦、ダイス、サツマイモほか野菜類が多く栽培されている。また、柑橘、カキ、クリ、ナシ、モモ、ビワ、キウイフルーツなどの果樹類の栽培も盛んである。特に、温州ミカン、イヨカン、種々の雑柑等は、本町の農作物の中で随一の換金高だったが、露地での生産は昭和四十年代をピークとして減少が続き、施設栽培(温室)が主流となっている。
 本町の山林は、かつてはカシ、シイ類や、ケヤキ、ブナ、マツなどの天然林だったが、主として明治期以後に、スギ、ヒノキなど針葉樹の人工造林が行われた。昭和の中期ごろまで本町の山林面積の半ばを占めていたのは、クヌギなどの薪炭林である。しかし、次第に化学燃料や各種の暖房器具が普及したため、薪や木炭の需要は急激に衰えた。現在は、わずかにシイタケの原木として姿をとどめている(詳細は、第三編第四章に記述)。
 本町の植物について特筆すべきは、昭和五十年前後に大発生した害虫マツノザイセン虫による被害である。このとき本町内の松の成木はほぼ全滅した。とりわけ、長い歴史を有する神社、仏閣、景勝地の松や、地域のシンボルであった老松が消え去ったことは、住民にとって計り知れない損失であった。この害虫による被害は、現在もなお散発している。