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双海町誌

第二節 伊予郡市の地質概要

一 領家帯と三波川帯
 伊予郡市内の土地は、中央構造線を境に、領家帯と三波川帯に二分されている。
(1) 領 家 帯
 中央構造線の北側の地域で、主として和泉層群(白亜紀)と安山岩(鮮新世)が分布している。
(2) 三波川帯
 中央構造線の南側で、三波川結晶片岩(シルル紀~ベルム紀)がほとんどを占めている。これは、地殻(厚さ約五〇キロ~六〇キロ)内の約三〇キロの深所で生成し、のちに隆起したものである。
 その他、礫岩明神層(始新世)、安山岩(鮮新世)などが分布している。


二 中央構造線
 本県の四国中央市を経て砥部町を通る中央構造線は、伊予市唐川谷、犬寄峠を経て、上灘川に沿って伊予灘に達している。
 伊予郡市内の土地は、この線によって北側の領家帯と南側の三波川帯に二分されている。
 このように、本郡市は中央構造線が通る場所にあり、しかもその露頭地が数箇所もみられるという点で、日本の地質学研究上、極めて重要な地域である。


三 断層の露頭地
(1) 砥部町大岩橋下の衝上断層
 和泉層群と久万層群(礫岩)の断層面に沿って火成岩(老朽安山岩)が入り込んでできたもので、天然記念物に指定されている。
(2) 犬寄峠の断層の露頭地(愛媛大学の三野教授による呼称は「犬寄面」)
 犬寄峠(旧国道五六号と県道広田・双海線の犬寄交差点)から北へ直線距離約一・二キロの地点にあたり、和泉層群(上盤)と結晶片岩(下盤)の断層である。


四 土地を形成する主要な岩石
 伊予郡市内の岩石は、結晶片岩、和泉層群の砂岩・泥岩、安山岩、礫岩、凝灰岩、石炭岩などである。

(1) 結晶片岩
 中央構造線とみかぶ線に挟まれた三波川帯の主要岩石は、結晶片岩である。中山町、双海町の大部分はこれで占められ、広田村、砥部町にかけても分布している。壺神山、牛ノ峯、中山町の黒岩岳・秦皇山も、結晶片岩でできた山々である。
 この岩石は、古生代初期から中生代後期に生成したもので、火山岩や堆積岩が地下の深いところで地熱や圧力を受けて変質してできた変成岩の一種である。結晶片岩の内部には、銅、アンチモニー、石綿、ロウ石など、多様な鉱物や岩石が含まれている。
 伊予郡市内に分布する結晶片岩は、大別すれば、緑色片岩、黒色片岩、砂質片岩だが、それらは、緑泥片岩、絹雲母片岩、紅簾片岩など、更に多くの種類に細分される。

(2) 和泉層群
 領家帯の主要地層である和泉層群は、白亜紀に生成した堆積岩の地層である。
 砥部町、伊予市、双海町に広く分布しており、三波川結晶片岩及び第三紀始新世礫岩との接触部は断層となっていて、既に述べたように、砥部、犬寄でその露頭部をみることができる。
 この岩石は、風化や浸食で生じた岩石の屑が海や湖に流れこみ、沈積し変質してできたもので、のちに水底から隆起して現在のような状態になったのである。その成因から想像されるとおり、この和泉層群には多くの化石が見いだされる。
 本町の八景山(俗称・禿山)も、和泉層群に属する山である。

(3) 安 山 岩
 伊予郡市内の安山岩は、石鎚層群に属し、鮮新世のもので、主として双海町、伊予市、砥部町に分布し、広田村、中山町にもわずかにみられる。
 その種類は、黒雲母安山岩、粗面岩質安山岩、角閃安山岩、石英安山岩、サヌキ岩質安山岩、斜方輝石安山岩などである。
 安山岩は、断層部分のような地殻の弱い部分に岩漿(マグマ)が湧出し、それが冷えて固まった火成岩である。堅いことが特徴で、したがって浸食作用を受けることは少ない。
 伊予郡市内の各所でも、この岩石でできた良質の柱状節理の石材が多く産出し、割石、砥石、すずり石、陶石などに利用されている。
 明神山、秋葉山、本尊山、障子山は、安山岩の山々である。

(4) 礫   岩
 伊予郡市内にみられる礫岩は、久万層に属する明神層と二名層で、ともに始新世のものである。
 明神層は、和泉層群の砂岩・泥岩、結晶片岩、花崗岩からなる岩石で、もともとそれらの岩石の屑が海や湖の底に沈積し圧力を受けて生成し、のちに隆起したものである。ただし、二名層は結晶片岩だけでできている。
 礫岩の主な分布域は広田村と砥部町だが、伊予市、中山町、双海町にも若干みられる。礫岩中にも多くの化石が含まれている。

(5) 凝 灰 岩
 中山町にみられる凝灰岩は、石鎚層に属し、鮮新世のもので、火山灰など火山性の噴出物が、水中や地表に降り積もり凝結してできた岩石である。水梨山は、凝灰岩の山である。

(6) 石 灰 岩
 石灰岩は、広田村や双海町にわずかに分布する。これは古生代のもので、石蓮虫、海騰、有孔虫、サンゴ、貝殻の遺殻が海底に堆積して岩石となったものである。


五 石材、鉱物の主要産地

(1) 割   石
 砥部町、広田村をはじめ、伊予市唐川、中山町永木、双海町の本尊山ほか各所で産出。

(2) 砥石、すずり石
伊予市唐川、砥部町の外山。

(3) 砕   石
広田村。

(4) 陶   石
 双海町高野川、砥部町万年・川登、伊予市両沢・鵜崎、中山町安部当、広田村上尾・満穂。

(5) 銅   鉱
 中山町寺野、広田村、双海町奥大栄。ただし、現在はいずれも休坑又は廃坑。


六 洪積地と沖積地

 砥部町や伊予市、双海町の洪積地は、新生代第四紀のもので、扇状地堆積物によってつくられた。
 松前町の大部分と、伊予市、双海町その他に分布する沖積地は、新生代第四紀以降のもので、海浜や河床の堆積物によってできたものである。
 これらの洪積地と沖積地は、本地方の主要産物である米、ミカンの栽培地として有効に利用されている。