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中山町誌

武智 金次郎 (たけち きんじろう)

 武智金次郎は佐礼谷村柿谷の人であった。幼少の頃は一家が貧困であったため、金次郎は一頭の馬を買い入れ、毎日この馬に荷を載せて郡中に運び、これによって賃銭を得て生計を立てていた。金次郎は馬を使役するに際し家族の如くこれを愛撫した。
 勤倹大いに努めたので次第に余財もでき家運繁盛するに至った。後年に及び使役していた馬も次第に老衰したが、これを人に売るに忍びず、「我が家の繁盛はこれ全く此の馬が勤勉よく我に仕えたからである、此の馬こそ我が家の恩人である」と言って馬が病に臥すると粥などを与え厚く介抱した。愛馬が死んだ後は祖先の墓所の付近にこれを埋葬し、小さな祠を造りひたすら冥福を祈った。(「伊予郡善行録」より)