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中山町誌

三、 地名の用語

 つぎに地名に多く使用される用語に着目してみよう。これらの用語は、それぞれに共通した意味をもち、地名の起源を尋ねる手がかりとして意味深いものがある。

 市 社寺の祭礼や法会の日に市のたつことが多い。ついで一定の日を標準とする定期市など市に関する地名である。

 浦 ウラは浦のほかに裏・末・東・北・点・心の意味がある。裏は表に対する語、末は本に、北は南を表としての裏である。

 馬 牧場を馬柵といい、駅伝の馬継宿駅を馬立・馬継という。
   馬路は狭隘な谷間に関係がある。馬木(中山町・吉海町・松山市・大洲市など)

 沖 海・海浜・広い田畑・野良・平野・山に対して川の方向など多様な意味をもつ。

 影 陽地に対して影地がある。北面して日照時間が少ない陽陰の地であり、谷間の地である。
   日浦などに対する地名としてできた。影浦(中山町・丹原町・八幡浜市)

 鍛冶屋 鍛はきたえる。金属道具を作る職人が鍛冶屋で、古来より集落において絶対必要な職業である。

 片 片は両に対する語、片方に山があり、他方は平地のようなところ。

 木 植物に由来を持つ地名も各地に存在するが、その内でも木にちなんだ地名が県下には多い。木には呪力を持つと考えられていたものがある。松・榊は正月に関係があり、柿は昔から食料に供された木、梶は繊維をとるなどなんらかの意味を持つものが多い。また、柚木は自生の梶が豊富にあったところといわれる。中山町にも木の名のつく地名は多い。

 久保 窪・深の佳字である。凹地・谷地・山裾で水と太陽が豊かな場所に名付けられた。

 佐古 狭間や小さい河谷、狭く細く行きつまったような谷、尾根にはさまれた狭い土地をサコという。

 沢 低地で水がたまり草が茂る湿地、山岳地帯の谷をいう。平沢・長沢(中山町)、沢松(今治市)

 佐礼 崖崩れ・小石の多いところをザレといい、座連・作礼・佐礼の字をあてた。
    サレはザレの転語と考えられ、山の崖崩れ、山峰の緩斜面の崩れ、崖地をいう。大佐礼峠(中山町)

 寺 神仏の所在地や信仰地がそのまま地名として定着したところが多い。寺野(中山町・城川町)、寺尾(中山町・丹原町・大洲市)

 新田 開拓・開墾された土地が、新田と呼ばれるようになり、新開・新地も開拓・埋立地であり、同じような意味で名付けられた。近世になり、人口増加もあって開拓が進み、新田名の土地も増加した。

 田 「耕作して稲等を植える土地、湿田と乾田とがある」とか、「耕して水を湛え稲を植える土地」とかいわれる。
   田は自然地形、信仰の様子、伝承の様子などさまざまな性格を持つが、その上に様子を冠して地名とする。栗田(中山町)

 大門 寺院の門前は参詣者が多くなるにつれ町並が形成され、交易のための布が開かれるようになり、交通の要衝となっていった。そしてある程度以上の規模をもつと門前町として機能するようになった。(中山町・菊間町・北条市)

 茶堂 城川町・野村町など高知県境には道傍に茶堂が多い。通行人等に茶の接待するところもある。

 鳥越 渡り鳥の群れが尾根を越える(渡鳥の旅路)ことに由来する。(中山町・川之江市・五十崎町・宇和町)

 中村 村は群れで、人が群がり住んでいるところであるという。その村々の中心となるところが中村と名付けられた。河川流域に沿う地域が多い。

 成 高地の平坦な土地、山腹の傾斜の緩い土地をいう。山間、内陸の町村には成の地名が多い。

 日浦 南面して陽光に恵まれた土地をいい、浦は住宅地であり、必ずしも海浜とは限らない。北面して太陽に乏しい地は陰と呼ばれる。(中山町・新宮村・小田町・大洲市)日南登(中山町)も同系統の地名である。

 平野 平は一般に平坦な土地をいうが、坂や傾斜地をさす場合もある。また、開墾地の開を当てるのが適当な所もある。平沢(中山町)

 札場 藩制時代に高札が建てられた場所である。法度や掟書など、主として禁令事項を記載した板札を高く掲げた。

 別府 別府の地名は中山町・大西町・重信町・松山市・長浜町にある。平安末期から鎌倉時代に成立した土地制度であるが諸説ある。

 森 山名の「~森」のように「森」を山そのものに用いることがある。太古は山を「モリ」と表現する場合もあった。
 この項の内容、特に(  )内の市町村名は『愛媛県史』参照。