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中山町誌

一、 神社の起源

 神道は、自然宗教・民族宗教であり、その起源は明確ではない。日本特有の多種多様な信仰や慣習を包括する神道は、律令期、あるいはその直前の時期に整ってきたようであるが、その信仰形態はそれ以前からあり、それらが大陸文化の影響等を受けつつ、整備されていったのであろう。
 「古事記」(七一二)と「日本書紀」(七二〇)は、神道の信仰にとって基本的な位置付けをされている。
 日本民族は、古来の伝統に従って、天照大御神を最高至貴の神として崇敬し、天神祗八百万の神と祖先を祭祀した。神々の御心に仕える精神をもって社会に奉仕し、天皇に表現される大和の精神をもって、祖国の発展を祈り、幸福を願ってやまない生活をしてきた。
 神道の信仰生活の中心は、神社ないし神棚と、祈りである。
 もともと神社は民族とともに誕生し、原始的な村落の共同体の中から信仰的宗教が発生したように思われる。農耕生活の先祖は自分たちの住居の一定の土地に共同で働き村落を形成していった。そこに生まれたのが、その土地を守る神、稲作に必要とする水の神、山を守る神などを祀る行事である。磐境(大きな岩)のような神聖な場所に神離(神霊が宿る場所)を設けて祭儀が行われた。
 その御心に叶った清くて静かな場所に、神様がお鎮まりになったと考え、人々はその場所を守り、神々しい姿を整えることで神様に対する深い崇敬を捧げてきた。
 しかし、神社の尊厳な宗教的美は、建物だけの構成美ではない。風土に恵まれた美として、豊富に繁茂する森が神々の住居の主要素になったと思われる。神社は森から始まり、森と共に発展してきた。従って神社の建物も森を背景とし、森と調和し、森の霊気によって築かれたのである。
 宗教としての神道は、歴史的には、日本の国家宗教であり、第二次世界大戦終了までは、天皇家と密接に結びついていた。民族主義的宗教として組織化されていた神道であったが、今日では、国家と分離され、一般的な慣習や個人的礼拝となっている。
 しかし、神道に由来する諸観念は、宗教的思想や日常の生活の中でも忘れ去られず、祈りとそれぞれの地方にある神社は、今もその重要性を保っていると思われる。