四、　野中幼稚園

　一　季節託児所から野中へき地保育所の設立
　野中地区に季節託児所ができたのは、昭和三六年（一九六一）頃から二、三年の間であった。季節託児所は野中小学校の和室を利用して、春と秋の農繁期に幼児を集めて一、二ケ月預かっていた。定員は二〇名程度で、保母が三名であった。やがて保育に対する野中地区住民の意識も高まり、一年間を通した保育の考え方もでてきた。バス便のよい地区からは、中山保育園へ通園させる家庭もあった。表２―１のように、通園児も増加していった。それと共に、校区あげての保育所建設の気運が高まり、野中へき地保育所が野中小学校の敷地内に建設された。

　二　野中へき地保育所
　昭和五四年（一九七九）四月一一日、野中へき地保育所落成式と同時に入園式も行われた。園児は二六名、保母は二名であった。園長は町の総務課長が兼務し、竹田時三郎が初代園長を務めた。
　園児二六名は二つのクラスに分けて保育が行われ、年長組（ゆり組）一三名、年少組（ばら組）一三名であった。また、保育には給食も取り入れ、小学校併設の給食施設を利用し、温かい給食が実施された。保育所建設後、ＰＴＡの活動も活発で、園舎の北西に砂場を設置した。その四隅に栗の木を立て藤棚を作ったり、保育所裏山の草刈り作業をしたり、保育所の環境整備に努めた。

　幼児用プール完成
　小学校のプールは昭和四二年に完成して、水泳の実績もあがり、幼児用プールの建設に対する要望も高まってきた。昭和四九年七月、幼児用プールが小学校プールの南側に完成した。昭和五四年には、小学校の教員住宅が取り壊され、その跡地にベビープールが完成した。

　三　野中幼稚園
　野中へき地保育所は一二ケ年幼児保育を担当したが、昭和五七年野中幼稚園として、教育委員会の管轄で開園する運びとなった。新園舎の建設にも取り掛かり、完成までの一年間は野中構造改善センターで保育した。
　昭和五八年四月新しい園舎が完成し、落成式が行われ移転した。野中幼稚園は鉄筋二階建で、二階部分が小学校使用、一階部分が幼稚園舎となり、保育室・遊戯室・事務室からできている。
　野中幼稚園は園長が野中小学校長の兼務となり、初代園長に田中和校長が就任した。
　親子の触れ合いを求めて、「伊予っ子広場」が五月に開催された。伊予っ子広場は、スポーツや野外レクレーション、奉仕活動などを親子が協力して進める中から、子供たちの健やかな成長を促す目的で行われ、八キロもの大きな粘土に親子が挑戦し、怪獣や乗り物などユニークな造形作品が作られた。
　親子キャンプが開催され、中島キャンプが一泊二日で行われた。地引き網の体験や、海水浴を中心とした親子で海の生活を楽しみ、夜は夜店やキャンプファイヤーで楽しい思い出をつくった。この親子キャンプは、親子の触れ合いはもとより、園児の両親が参加することにより、保護者間の連携や協力にも役立っている。この行事は、森ノ浜キャンプ、北条青少年スポーツセンター、城川町宝泉坊キャンプ等に引き継がれ、現在も幼稚園最大の親子行事となっている。
　平成元年幼稚園教育要領が改訂され、新しい教育課程が平成二年度から実施された。
　野中幼稚園では、中山町教育委員会と保護者の協力により、平成四年度から三歳児教育を始めた。「三つ子の魂百まで」という。幼稚園教育の基本には、「三歳児から小学校入学までの園児を教育する」とあり、一家庭当たりの少子化に対する集団学習の大切さと、幼児数の減少化傾向への危機感とによって、三歳児教育の先取りが成されたことは、幼稚園教育に多大の効果を期待したものである。
　三歳児の入園状況は、表２―２のとおりである。
　幼稚園は小学校の敷地内にあり、幼稚園・小学校の関連教育も比較的スムーズにいっている。平成四年度には、幼小関連訪問があり、「地域の豊かな自然や事象とのかかわりの中で、一人一人が個性を生かしながら生き生きと表現できる園児・児童の育成」を研究主題として実践した。三・四・五歳児の混合保育を通して、野中の自然を生かし、マラカスや落葉の服の製作をしたり、落葉のプールで自然の感触を楽しんだりした。また、小学校の生活科の授業に参加し、学校生活の楽しみも味わうことができた。
　平成六年度には「自分から思い切り身体を動かして活動する楽しさを味わうようになるには、環境をどのように構成すればよいか」を研究主題に実践した。特に、野中の自然を活用し、幼児の身の周りにある自然を遊びに取り入れ、自然と触れ合う心の育成を中心に幼児の活動を支援していった。野中の自然を環境構成に生かし、幼児の生き生きとした活動を引き出しながら、地域の幼児教育のあり方を模索している。