データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

中山町誌

一、 中山町の地質の概要

 中山町は中央構造線のすぐ南側に位置し、地質区分では西南日本の外帯に属する。
 次の図4-3は、中山町の地質図である。図からもわかるように、本町の大部分は三波川帯の変成岩類に覆われている。
 北部の犬寄峠付近には、石鎚山第三系久万層群の二名層が、また、二名層に対比される礫岩層が南部の平村に小規模に分布している。
 東部の障子山から天翅のゴルフ場一帯にかけては、石鎚山第三系久万層群の明神層が分布している。障子山周辺や梅之木地区、町内西部の永木地区カンヤには石鎚山第三系の石鎚層群が見られる。北部のところどころにも、石鎚山第三系火山岩類の小規模な岩脈が観察される。
 中山町内では、三波川帯以外の領家帯・みかぶ帯・秩父累帯・四万十帯は見られない。
 広く覆っている三波川帯結晶片岩の中には、金属資源が含まれているところもあり、過去には採鉱していた所があった。
 安別当や東町の二箇所では鉱泉の湧出も見られ、開発を試みたことがあった。

 (一) 三波川帯変成岩類
 中山町の大部分を覆う三波川帯変成岩類は、三波川結晶片岩類ともいわれるものである。これら結晶片岩類は、原岩(源になる岩石)が地下の深い所で、低温高圧の変成作用により変成されもので、様々な条件により異なった岩相を呈する。緑色片岩、黒色片岩、珪質片岩などがそれである。
 縞状に見えるこれらの岩石は、著しい片理(結晶片岩を特徴づける構造で、変成作用によって生じた結晶が一定方向に並んでできる面状の構造)が発達しており、片理に沿って、薄く板状に割れやすい。町内の結晶片岩類の片理面は、ほとんどが傾斜しているが、所々に地殻変動による褶曲や断層を見ることができる。
 これら三波川結晶片岩類の変成年代は、放射性同位元素による絶対年代測定資料をはじめとする新しい知識によって、中生代のジュラ紀と考えられている。三波川結晶片岩類は、中山町内で見られる岩石のうち、最古のものということができる。

 ① 緑色片岩
 本町を覆う三波川 結晶片岩類のほとんどが、緑色片岩で占められている。緑色片岩は、塩基性(玄武岩質)の火山砕屑物(凝灰岩や熔岩)が、低温高圧のもとで変成し、緑泥石、緑れん石、角閃石などの鉱物を生じたため、片理がよく発達し、名のとおり緑色をしている。緑泥石は濃緑色をしており、これを主とする岩石を「緑泥片岩」といい、緑れん石は淡緑色をしており、これを主とする岩石を「緑れん片岩」という。中山町のほとんどは緑泥片岩からなっている。

 ② 黒色片岩
 町内北西部の上長沢から壬生川にかけてと、町内南東部の水無権現から大佐礼峠近くに至る町境付近にかけて、緑色片岩に挟まれるように黒色片岩が帯状に分布している。黒色~灰黒色の黒色片岩は、主に泥岩などが変成されたもので、石英と絹雲母からできており、片理が良く発達し剥離性が著しい。

 ③ 珪質片岩
 町内北東部の寺野周辺および中替地、秦皇山の北東側と南側、町内南部の福岡から漆・栃谷の馬木にかけて、緑色片岩に挟まれるように帯状に珪質片岩が見られる。大部分が石英からなり、雲母や紅れん石などを含む。白色~灰白色のものや紫赤色、暗赤色を呈するものがある。これらは珪岩(チャート)が、緑色片岩や黒色片岩と同じ様に変成されたもので、非常に硬い。紫赤色をしたものは紅れん石英片岩、暗赤色をしたものを赤鉄石英片岩と言われる。

 (二) 石鎚山第三系
 犬寄付近、平沢の中野付近、寺野から天翅一帯にかけてと、永木の北部には、三波川結晶片岩類を不整合に覆う石鎚山第三系が分布している。
 石鎚山第三系は新生代第三紀の堆積岩類や火成岩類からなっており、堆積時期・活動時代や岩相により、久万層群と石鎚層群とに分けている。
 久万層群は、三波川変成岩類の礫・砂などからなる二名層と、内帯の和泉層群の砂岩、花崗岩類や領家変成岩類などの礫などからなる明神層とに分けている。
 石鎚層群は、瀬戸内火成活動によって、主に外帯側に噴出してできたもので、凝灰岩や火砕流堆積物からなる下位の高野層と、安山岩類や酸性岩類からなる上位の黒森峠層に分けている。これら、石鎚層群は久万層群を不整合に覆っている。

 ① 二名層
 町内北部の犬寄付近には二名層が分布している。南部平沢の中野付近にも二名層に対比される礫岩が分布している。犬寄付近では三波川変成岩類(主に緑色片岩)の礫を主とした礫岩層で、礫の円磨度が低く角礫状のものが多い。平沢付近では、やや円磨された三波川変成岩類の礫からなっている。町内の二名層からは化石は発見されていないが、久万町父二峰二名の模式地の化石から、新生代第三紀・中期始新世と考えられている。

 ② 明神層
 町内北東部の寺野から天翅、ゴルフ場にかけて、領家帯の和泉層群の砂岩、花崗岩類や領家変成岩類などの礫などからなる礫岩・砂岩の明神層が分布している。寺野付近では、下位から上位にしたがって、礫の大きさが小さくなり、砂岩層に移行している。町内の明神層からは化石は確認されていないが、久万町の化石から新生代第三紀・後期始新世と考えられている。

 ③ 高野層
 町内北東部の間戸峠付近から障子山にかけて、久万層群の明神層を不整合に覆う石鎚層群の高野層が分布している。多くは暗灰色~灰色から淡青色を呈し、中に変成岩類や乳白色の凝灰岩質(軽石状)の角礫を含んだ、凝灰岩や火砕流堆積物である。

 ④ 黒森峠層
 石鎚層群黒森峠層に属する火成岩は、輝石安山岩が障子山一帯に、小規模な岩体として分布している。永木のカンヤでは三波川変成岩類を貫いて黒雲母安山岩が分布している。また、安別当ほか数箇所には流紋岩が岩脈として観察される。
 これら石鎚層群の地質年代は、最近の研究から、第三系の中期中新世と考えられている。

 (三) 中央構造線
 中山町の北部の犬寄から赤海に至る町境付近では、中央構造線といわれる大断層が走っており、それを観察できるところがある。
 そのうち、旧国道五六号線沿いの犬寄峠近く(双海町)では、かつては和泉層群と三波川変成岩類、和泉層群と久万層群を境とする中央構造線が観察されたが、現在は改修や植物の繁茂になどにより明確な境は観察しにくい。
 国道五六号線の伊予市小手谷の犬寄大橋の下には和泉層群と三波川変成岩類が接する中央構造線が観察される。
 また、予讃本線(内山線)の犬寄トンネル内では、伊予市側の入り口から、およそ一〇〇メートル入った付近で中央構造線を貫いていると考えられる。資料によれば、ここでは和泉層群と三波川変成岩類の間に安山岩が貫入している。
 中央構造線は、白亜紀前期頃に、北側の領家帯の諸岩石が、南側の三波川変成岩類に乗り上げて誕生し、その後、数次の活動を経たであろうと推定されている。
 犬寄付近の中央構造線は、北側の和泉層群が、南側の久万屑群や三波川変成岩類上に衝上するもので、その活動を砥部時階といい、久万層群堆積後、石鎚層群堆積前の活動と考えられている。
 犬寄大橋(伊予市大南)付近の深い谷や、国道五六号線の犬寄トンネル付近で見られる双海町の上灘方面へと広がる谷は、この中央構造線に伴う急崖な地形を表している。

 (四) 第四系
 中山町の中心地を形成している平地や、東部の天翅、佐礼谷地域の中山川沿いの影浦などには、最近一万年以後の第四系完新統の堆積物や、崖錐性堆積物が分布している。

図4-3 中山町の地質略図

図4-3 中山町の地質略図


図4-4 犬寄トンネルの地質略図

図4-4 犬寄トンネルの地質略図


表4-2 中山町の地質時代

表4-2 中山町の地質時代