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中山町誌

二、 気候要素別の特徴

 (一) 気温
 図3-3、表3-1は、昭和三五年から平成三年までの中山地域気象観測記録(昭和四三年・五三年・五八年・六〇年を除く)をもとにした、中山町の月別の平均気温・最高気温・最低気温、およびアメダスによる、昭和五四年から平成二年までの一二年間の降水量を示したものである。
 中山町の年間平均気温は一四・八度で、七月は二五・八度、八月は二六・六度と二五度を越えるが、一・二月は三・七度、四・三度と低い。
 最高気温では、七月は三〇・七度、八月は三一・五度と高くなっている。
 最低気温では、一月が最も低く氷点下〇・三度、二月氷点下〇・一度となっている。
 松山(瀬戸内気候区)・宇和島(太平洋気候区)・久万(山岳気候区)と比較すると、図3-4平均気温では松山より一・四度、宇和島より一・六度低く、久万より二・三度高い。いずれの月も松山・宇和島より低く、久万より高く、それぞれの気候区の中間的な地域であるといえる。
 中山町の七・八月の最高気温(七月三〇・七度、八月三一・五度)は、松山(三〇・五度、三一・六度)、宇和島(三〇・四度、三一・六度)の数値とほぼ同じである。この期間での最高値は、昭和五九年八月八日に三五・八度を記録している。これは山間部でありながら、夏の暑さが厳しい事を物語っている。
 最低気温は、一・二月には平均値で氷点下の値を示す。日々の観測でも氷点下を記録することがしばしばあり、この期間での最低値は昭和五六年二月二八日には氷点下七・〇度の記録がある。夏の暑さとは逆に、冬はかなり寒いことを物語っている。
 七・八月の最高気温が松山・宇和島と同じで、最低気温が松山・宇和島より下回っていることは、この時期の朝方の冷え込みなど、一日の温度差の大きいことを物語っている。

 (二) 降水量
 図3-3のように、中山町の降水量を見ると、平成二年までの一二年間の地域気象観測「アメダス」による年平均降水量は一、七三〇・九ミリメートルである。月別では六月が最も多く二五九・五ミリメートル、ついで七月・九月の順となっている。これは梅雨や台風の影響によるものである。
 この期間の一日最多降水量は昭和五四年六月二七日の一六七ミリメートルである。また、年間の降水日数は一二七・三日と、ほぼ三日に一日は雨が降ったことになる。
 図3-5は、松山・宇和島・久万との月平均降水量を比べたものである。月別の降水量の変化を見ると、久万と類似している。これは、山岳気候区に準じた降り方をするものと考えられ、防災上からも注意する必要がある。
 降水量の中に含まれるものに降雪がある。中山町の降雪は、地球の温暖化の影響からか、古老の話や昭和三八年の三八豪雪(前町誌記述、積雪八〇センチメートル)のような大雪は観測されていない。
 昭和五四年以降の平成元年までの観測記録から見ると、昭和六二年一月一四日の二五センチメートル、昭和五九年一月一九日の二二センチメートル、昭和六〇年一月六日の二〇センチメートルと、昭和五四年以降二〇センチメートル以上の積雪を見たのは三回となっている。
 町内の積雪は、久万地方で深い積雪を見る場合は、町南東部に行くほど、南予地方で深い積雪を見る場合は、町南部や永木で、また、標高が高くなるほど積雪が深くなる傾向がある。

 (三) 日照時間
 平成元年からの新しい「しきい値」(直達日射量〇・一二キロワット/㎡)による県農業気象観測の日照時間観測の、平成四年までの四年問の記録によると、中山町の年平均日照時間は、二一五七・八時間となっている。年間では四月から八月にかけて多く、一二月から二月にかけて少なくなっているのは、昼間の時間の長さとの関係が大きい。
 単純には比較できないが、年間の日照時間を松山・宇和島と比較すると、松山の一九八〇・〇時間、宇和島の一九一三・一時間より二〇〇時間前後多くなっている。
 これは、山間部ではあるが南西部が開け、西部の牛ノ峰・北部の秦皇山、黒岩岳などの地形的な要因も加わり、比較的長時間日が照るためと思われる。

 (四) 湿度
 昭和六三年九月から平成五年八月までの農業気象観測によれば、中山町の年間平均湿度は七四パーセントである。
 湿度は、天気や降水量、季節風などの影響による変動が大きく、五年間の記録からは断定できないが、一月から四月にかけては低く六月から九月にかけては高くなっている。
 松山(年平均湿度六九パーセント)と比べると、五パーセントも高い。日照時間の多い割に、湿度が高いのは、町全域が植物で覆われているからかもしれない。

 (五) 風
 風向・風速は地形の影響を受けることが大きい。中山町の地形は、前述のとおり複雑で、風向・風速の地域差がある。
 図3-6は、地域気象観測の昭和六三年四月から平成元年三月までの一年間の、一日の最多風向を一六方位で表したものである。観測所の伊予消防等事務組合消防署中山出張所は、ほぼ南北に流れる中山川近くにあり、北東部に秦皇山がそびえ、周囲は三〇〇~五〇〇メートルの山に囲まれた小盆地状の平地にある。これら地形の影響から、北北東の風一〇七日、北の風七九日、北北西の風三二日と、一年のおよそ五分の三が北よりの風で占められ、ついで、南南西の風三二日、南南東の風三〇日、南の風二一日と、南よりの風が一年のほぼ五分の一となっている。
 風速を見ると、毎月の平均風速は〇・五メートル/秒~一・〇メートル/秒の間にあって穏やかである。しかし、台風や強い季節風が吹き荒れると、局地的に樹木が倒れる被害が見られ、場所によっては強い風が吹くことがある。

  (六) 霧
 肱川流域、中でも大洲盆地の霧の発生は、県下では最大級で、久万盆地とともに多い。その肱川(小田川)の支流である中山町の霧の発生は少ない。昭和三五年からの一〇年間の観測によれば、年間平均五・三回である。国道五六号線の新長沢橋付近などに、局地的な霧の発生が見られ、その発生回数は町中心部より多い。
 この霧の発生は、晴天で風の弱い夜、地表面が放射のために冷却し、空気も地表面に近いところから冷やされてできる放射霧がほとんどである。夜半から朝方にかけて発生し、次第に消滅する。

図3-3 中山町の気温・降水量

図3-3 中山町の気温・降水量


表3-1 中山町の気温・降水量

表3-1 中山町の気温・降水量


図3-4 中山町と松山・宇和島・久万の気温の比較

図3-4 中山町と松山・宇和島・久万の気温の比較


図3-5 中山町と松山・宇和島・久万の降水量の比較

図3-5 中山町と松山・宇和島・久万の降水量の比較


表3-2 積雪の記録

表3-2 積雪の記録


表3-3 日照時間

表3-3 日照時間


表3-4 湿度

表3-4 湿度


図3-6 中山町の風向

図3-6 中山町の風向