データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

伊予市誌

3 中心市街地の活性化

 伊予市中心市街地の現状
 伊予市の中小商業は、車社会化の進展など時代の流れとともに一九八〇(昭和五五)年ころから衰退が始まった。特に、一九九一(平成三)年の大規模小売店舗法の改正を契機とした郊外型大型店の出店・増床の加速、車社会への対応の立ち遅れなどにより、業績不振などで空き地や空き店舗が増加し、空洞化の傾向が顕著となり、その結果、中心商店街への来街者が激減し、急速に街の活力が低下していった。

 まちづくりへの取り組み
 このような深刻な状況に対して、危機感を持った地元商業者は、「自分たちの町は自分たちの手で」をスローガンに、地域独自のまちの資源を活かしたまちづくりへの取り組みを始めた。その一つが、伊予市に古くから伝わる五色姫伝説をテーマにし、一九八九(平成元)年から始まった、女性の祭典「五色姫復活祭」の開催である。
 一九九四(平成六)年には、「海とロマンのまち伊予市」をテーマとしたまちづくりを提唱し、各種活動を展開した。これらは、五色姫伝説、灘町・湊町の伝統的町家、萬安港(伊予内港)築港などに象徴される地域固有の歴史、海などの自然、街の景観などを、まちづくりの大きな軸とするものであり、徐々にではあるが着実にまちづくりの輪が広がっていった。

 株式会社まちづくり郡中の設立
 そんな中、全国的な中心市街地の衰退・空洞化に歯止めをかけるべく、国は、一九九八(平成一〇)年七月、中心市街地活性化法(中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律)を施行した。
 地元商業者は、中心市街地活性化に向けて抜本的に対処するため、基本計画策定のための勉強会を重ね、一九九九(平成一一)年九月、伊予商工会議所が主体となり、伊予市中心市街地活性化マスタープラン(商業編)を策定し、市へ提出した。市は、これを重く受け止め、市単独予算で基本計画の策定に取り組んだ。検討委員会、ワーキンググループ委員会、庁内検討委員会を設置し、協議を重ねたほか、アンケート調査や視察研修、灘町・湊町地区伝統的町家建物調査などを行い、二〇〇〇(平成一二)年六月、「いよいよ郡中街物語がはじまる~海と歴史の浪漫を感じる暮らしやすいまちづくり~」をコンセプトとした、伊予市中心市街地活性化基本計画を策定した。
 二〇〇一(平成一三)年三月には、この基本計画に掲げられた商業等の活性化のための一六の事業の具現化を図るため、伊予商工会議所が主体となり、中小小売商業高度化事業構想(TMO構想)が策定された。その中で、まちづくりを推進する機関を商工会議所にするのか、第三セクターによるまちづくり会社を設立するのか議論を重ねた結果、TMO構想の実現のためには、第三セクターで行うのが一番好ましいと判断し、二〇〇一(平成一三)年九月一〇日、資本金四、〇〇〇万円(伊予市二、〇〇〇万円、民間二、〇〇〇万円)にて、株式会社まちづくり郡中が設立された。そして、中心市街地活性化法により、株式会社まちづくり郡中が作成したTMO構想の認定を伊予市に申請し、同年一〇月二六日、伊予市のTMO(認定構想推進事業者)として認定された。当時、全国で一八〇番目、そして、四国では三番目、愛媛県では最初の第三セクターによるTMOが誕生した。
 株式会社まちづくり郡中の特徴は、NPO的な運営を目指しており、会社の利潤は株主へ配当を一切行わず、まちづくりのために再投資を行う、また、会社役員も全員無報酬とするなど、市民ボランティア、市民参加による新しい第三セクターを目指している点である。

 街の交流拠点の整備
 伊予市中心市街地活性化基本計画では、歴史を活かした市の顔になる地区、市民生活の中心となる地区、市民や観光客らが充実した余暇を楽しむことができる地区の形成を掲げており、点から線へ、線から面へと活性化に繋げていくため、四つの拠点の整備と四つの軸の充実を図ることにしている。
 四つの拠点 ①街の交流拠点(JR伊予市駅周辺)
       ②歴史の拠点(宮内邸付近)
       ③海の交流拠点(スピーダー・ターミナル跡地周辺)
       ④暮らしの拠点(伊予鉄郡中駅付近)
 四つの軸  ①商業軸(灘町・湊町通り)
       ②交流軸(国鉄通り)
       ③生活・文化軸(広場通り・旧役場通り)
       ④行政・業務軸(西町谷上線(夕やけ通り))
 四つの拠点整備のうち、最初の事業として取り組んだのが、街の交流拠点の整備であった。
 まず取り組んだのが、施設のコンセプト調査事業であり、平成一三年度と平成一四年度で実施した。検討委員は駅利用者や消費者を中心にし、駅の利用者である高校生や、二〇代から六〇代の女性によるグループヒアリング等の協議を重ね、基本コンセプトとして、①地場産業の振興、②快適な環境の提供、③交流情報の提供、④コミュニティビジネスの拠点、施設のコンセプトとして「思いやりの壬づくり交流市場」を掲げた。観光情報や地域情報の発信拠点として、市内外の人々の交流を通しながら、商店街への新たな人の流れを創り出し、中心市街地の活性化に繋げていくことを施設の目的とした。また、施設の建設は、経済産業省所管の国庫補助により市が行い、運営は民間が行うという「公設民営方式」を採用した。
 施設の建設は、経済産業省所管の中心市街地商業等活性化総合支援事業を活用し、平成一五年度事業として実施した。
 施設の概要は、総事業費一億一、六三五万三、〇〇〇円、敷地面積二、二〇五・七五平方メートル、延床面積四四九・〇四平方メートル、木造平家建て一部二階建てで、特産品販売棟、テナント棟(一〇区画)、インフォメーション棟、公園広場、駐車場などからなっている。
 運営管理については、指定管理者を公募した結果、TMO(株式会社まちづくり郡中)が認定された。また、テナントの募集・選考はTMOがすべて行い、出店説明会・個別面接を行い、施設のコンセプトに合った一〇のテナントを決定した。また、伊予商工会議所においても、出店者を対象に資金調達から経営までのカリキュラムで研修会を実施した。
 施設の愛称も公募した結果、伊予市の中心市街地に現存する伝統的な町家をイメージした「町家」に決定し、魅力と活力のある市街地の再構築を目指す「街の顔」として活性化の起爆剤となるべく、二〇〇四(平成一六)年四月二九日、関係者、また、多くの市民の期待を受けて、街の交流拠点が誕生した。