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伊予市誌

一、明治時代初期の農民運動

 明治維新以来、新政府が行った多方面の大改革は、国内の社会に大きな不安を引き起こした。とりわけ、幕藩体制の下で貧窮にあえいでいた農民たちは、政府の急進的な文明開化に失望したばかりでなく、戸数の調査、種痘の実施などにはかえって猛烈な反感を持ち、ついには農民騒動を起こすに至った。これらの一揆の対象となったのは、大地主である庄屋、富裕な高利貸や資本家、専制的な官吏らであった。

 大洲・郡中騒動
 一八七一(明治四)年には、新政府の打倒を叫んだ反動的闘争と言える農民一揆が頻発した。大洲・郡中の騒動もその一つである。同年七月の廃藩置県によって大洲県が置かれ、旧藩主加藤泰秋は東京に移住することになり、山本尚徳が大参事となって革新政策を進めた。旧藩内にはこの進歩的な行政を喜ばない士族がいて、社会の不安と人心の動揺とに乗じて貧窮な農民をそそのかした。
 県は、目安箱を設置して彼らの要求を投書させたところ、旧藩知事の東京移住中止、山本尚徳以下の進歩的な官吏の解任、士族に俸禄の支給、廃止された旧制度の復活、課税の軽減、産物役所の廃止、種痘の自由、蘭法医の排斥などが挙げられた。山本尚徳は一揆を鎮圧できない責任をとって自刃したので、ついに農民たちも解散するに至った(『愛媛県史概説上巻』)。