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伊予市誌

2 伊予警察署の沿革

 県治条例と聴訟課
 廃藩置県の後一八七一(明治四)年一一月二七日に「県治条例」(太政官第六二三)を制定した。県庁の事務が四課に分かれ、そのうち「聴訟課」では「県内ノ訴訟ヲ審聴シ其情ヲ尽シ長官ニ具陳シ及県内ヲ監視シ罪人ヲ処置シ捕亡ノ事ヲ掌ル」と定めた。
 この県治条例に基づいて、初めて警察・裁判事務を担当することになった。
 次いで、同年一二月二二日、政府は新たに「捕亡吏」を全国的に設置することにした。

 邏卒の編成
 一八七三(明治六)年六月五日、愛媛県成立後初めて邏卒が配置された。邏卒は捕亡吏とともに県の聴訟課に属した。一八七四(明治七)年五月一二日付け内務省への報告書によると、支屯所を伊予郡米湊町と他に一か所増設されて計一二か所となった。なお、本屯所は松山・今治・大洲・宇和島の四か所にあった。
 邏卒の勤務規程ともいわれる「邏卒章程」(明治六年六月五日)の中に邏卒の任務として「懇ニ人民ノ安寧ヲ警保スル」と規定し、具体的には犯罪の予防及び国民の生命財産の保護に当たらせた。また、犯罪者を発見したときの処置要領や泥酔者・行路病人などの保護、火災現場の取り締まり、乞食の追い払い、遺失物の受理など多くのことを規定したものであった。
 一八七五(明治八)年八月に愛媛県では、屯所に本屯・支屯の区別を設け、本屯は各大区ごとに一か所ずつ合計一四か所、本屯の下には二~一三か所の支屯合計八五か所を置いた。
 第八大区は郡中に本屯を置き、第一~五支屯を松前村・宮内村・総津村・中山村・上灘村に置いた。

 巡査の誕生
 一八七五(明治八)年一〇月二四日、政府は邏卒を巡査と改称する旨を布達した(太政官第一八二号)。
  一八七六(明治九)年一月には郡中屯所に二等巡査一人・三等巡査一人・四等巡査一一人の計一三人が配置された。

 郡中分署
 一八七八(明治一一)年一二月一六日付きで従来の大・小区制を廃して郡・町村を編成し、郡役所を設置した(愛媛県布達甲第一三九号)。
 これに対応して警察の組織機構が変わり、一二月二七日「警察本分署交番所位置所轄区域巡査配置方」が全面的に改正された。これによって、松山警察署郡中分署となり、一等巡査一人・三等巡査一人・四等巡査八人の計一〇人が配置された。

 郡中警察署
 一八八六(明治一九)年七月の地方官官制に基づき「一郡一署主義」を採用することになった。同年一一月一六日県内の警察区画が改正されて、郡中分署は昇格して郡中警察署となり、湊町に本署を置いて、下浮穴郡の内上唐川村ほか一〇か村と伊予郡の内下唐川村ほか三五か町村を所轄することになった。
 一八八九(明治二二)年五月一日、従来の交番所を全廃して派出所・駐在所を新設した。(明二二・三・一五県告示第三〇号)
 一八九〇(明治二三)年一月一五日派出所・駐在所の設置位置を改正、郡中警察署には上灘町・中山村・松前村の三か所に派出所が、郡中村・岡田村・南伊予村・北伊予村・北山崎村・南山崎村・佐礼谷村・出渕村・下灘村の九か所に駐在所がそれぞれ設置された。
 一八九六(明治二九)年四月、法律第八四号をもって伊予郡の一部であった垣生・余戸が温泉郡に編入され、原町村・砥部村・広田村・出渕村・佐礼谷村・上灘村・下灘村が伊予郡に編入されることになったので、一八九八(明治三一)年三月、大南分署の管轄が砥部村・原町村・広田村に改められた。
 一九〇二(明治三五)年五月、大南分署が廃止されて、砥部村・原町村・広田村は郡中署の管轄となった。
 一九四〇(昭和一五)年二月一日、郡中町と郡中村が合併したため、郡中警察署の管轄区は五町九か村となった。
 一九四八(昭和二三)年三月七日、警察法実施に伴う警察機構改革によって、郡中町・松前町の二町は、それぞれ自治体警察を設置したので、郡中警察署を「国家地方警察伊予地区警察署」と改称した。その管轄は、砥部町・中山町・下灘村・佐礼谷村・南山崎村・北山崎村・南伊予村・北伊予村・岡田村・原町村・広田村の三町九か村となった。
 一九五一(昭和二六)年一〇月一日、郡中町及び松前町は、警察法の改正実施による住民投票の結果、両町ともに自治体警察を維持しないことに決定し、伊予警察署に統合したので、管轄区域は伊予郡一円となった。このとき、松前町には警部派出所を新設して、署員一〇人をおいた。
 一九五四(昭和二九)年七月一日、警察法の改正実施に伴い、国家地方警察と自治体警察を廃止して、新たに愛媛県警察となり、当署の名称は郡中警察署となった。
 一九五五(昭和三〇)年一月一日、郡中町・南伊予村・北山崎村・南山崎村の一町三か村が合併して伊予市となったので、警察署の名称が伊予警察署となった。
 同年二月一日と三月一日に伊予郡内で町村合併が実施され、新たな体制のもとに、中山町・双海町・松前町・砥部町が誕生したので、伊予警察署の管轄は一市四町一村となった。
 一九九六(平成八)年四月一日、松山南警察署の新設に伴い、砥部町、広田村が松山南警察署の管轄となったので、伊予警察署の管轄は一市三町となった。