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伊予市誌

4 C型肝炎

 伊予市は、従来から肝がん・肝硬変・慢性肝炎による死亡率が高く、肝がんの標準化死亡比(SMR)も県平均を大きく上回り有病率も高いことから、地域保健を推進する上での重要な課題となっており、早急な対策が求められてきた。
 一九九七(平成九)年から地域保健推進特別事業の一環として、総合的な肝疾患対策を推進するため、愛媛県・松山中央保健所・伊予医師会・愛媛大学医学部第三内科・国立病院四国がんセンターの支援を得て肝疾患対策協議会を設置し取り組みを開始した。
 具体的には、C型肝炎ウイルスの感染について、全地域を対象としてHCV抗体検査を実施し感染者の実態を把握した。これによりHCV抗体陽性者を早期に発見し早期の受診を促し、継続した健康管理を指導した。このことが、慢性肝炎・肝硬変・肝がんへの進行を防止し、肝がん死亡率を減少させる最も確実な方法であった。また、広く一般市民にC型肝炎に対する正確な知識の普及啓発を行った。発見された陽性者に対しては、精密検査結果報告書を基に定期的な経過観察や治療の継続、更に、肝疾患手帳を活用した自己管理能力の向上を促すとともに、医療機関との連携により確実に医療につなげるよう継続した事後指導を行っている。
 一九九七~二〇〇一(平成九~一三)年までの健診結果によると、陽性者の分布は、年代別には若年層ほど減少していることを示している。それを考慮して二〇〇二(平成一四)年の小中学生の生活習慣病予防健診に、C型肝炎ウイルス検査をあわせて実施したところ、六三八人が受診(受診率九七・六%)し、全員「陰性」の結果からも若年層への新たな感染が終息していることの確認がなされた。
 C型肝炎ウイルス感染の背景としては、血液による感染経路から輸血歴・手術歴・鍼治療歴についてHCV抗体陽性群と陰性群を比較してみると、陽性群の方が有意に高いことが見受けられるものの感染原因を特定するには至っていない。肝疾患対策説明会・地区巡回健康教育・肝疾患を考えるシンポジウムなどを開催した結果を分析すると、肝疾患に対する正しい理解と市民の健康への関心は高まっていることがうかがえるが、本事業でのHCV抗体検査受診者は一八歳以上の人口の二五・八%にとどまっている。今後も引き続き陽性者を早期発見・早期治療の観点から、息の長いねばり強い未受診者への受診勧奨と肝臓病に対する正しい知識の普及啓発を図っていくことで更なる健康意識を高めていく必要がある。なお、HCV抗体検査実施状況は第65表のとおりである。

第65表 HCV抗体検査実施状況調査

第65表 HCV抗体検査実施状況調査