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伊予市誌

1 赤痢

 急性伝染病のうち特に赤痢は集団的に発生することが多く、一九六一(昭和三六)年には伊予市周辺に県政史上類例のない赤痢の異常集団発生を見た。これに対して防疫措置を積極的かつ効果的に実施するため対策本部を設置しその遂行に努めた結果、一〇月三一日以降の患者の続発は一一月末をもって終息を見た。
 このときの本市の集団発生は患者数三、九三一人(男一、八〇〇人・女二、一三一人)、砥部町は二一七人を数えたが、幸い罹患者からは一人の死亡者もなく、また第二次感染も予防薬剤の一斉投与により、最少限度に食い止められ、最も懸念された周辺地域への伝染もきわめて小範囲にとまり防疫対策は好成績を得た。
 異状な大発生を極めて短期間に終わらせ、続発患者を食い止めたことは、防疫対策としての応急防疫措置が適切に行われたこと、これと相まって防疫活動に尽くした県・市・保健所更に厚生省・陸上自衛隊・県内公的医療機関・県市医師会・県内各市・松前町・東洋レーヨン松前工場の組織的援助によるものであった。また、市民の理解と協力が非常に良好であり、医療機関、婦人団体、食品業者など民間団体の積極的な協力応援を得たことと、この集団発生の菌型が赤痢菌のうち中経症のD群ゾンネ菌であったことである。
 防疫活動に携わった要員等
一 活動期間
   自 昭和三六年一〇月三〇日
   至 昭和三六年一二月六日
二 活動要員
    県関係  四、三二〇人
   総延人員 一万〇、五八〇人
    市関係  五、三四〇人
   協力機関     九二〇人
三 所要経費
     二、一〇〇万円
 赤痢患者収容所別調は第64表のとおりである。
 赤痢発生の原因(防疫本部を解散するに際しての文書より)
  一、本事件に関連する諸問題は、なお今後に残されることになったが、その第一点としては「原因の探究」にあると考えられるので、あらゆる角度と観点から調査研究を続けている。
  二、発生以来、今日までの間に推測した主な理由の一つとしては、いわゆる水系による感染との見方が濃厚であり、これが比較的問題であるように思われるとの見解にある。しかし、これら発生地域には集発に先立って九月の時点、下痢患者をみている事情もあり感染源ならびに感染機会等に関しての判定は困難であり、未だ明確に判定を下す域には達していない現状である。
  三、主因の一つが水系であると推察される理由としては、
 A 隔離患者約一、〇〇〇名の疫学的調査により
  ○ 給水地域が一定していること。
  ○ 年令が全てに分布していること。
  ○ 男女性別の差別のないこと。
  ○ 松山市在学生(拓南中学校)の飲用者に患者を出していること。
  四、今まで察知し得た本流行の疫学現象の主要な点は次の事項である。
 A 患者発生の傾向は急激な上昇とやや緩徐な下降線をたどり終息は一二月二日であること。
 B 集団発生時における年令分布は主として年少者に発生率が相当高いこと。
 C 患者発生は上水道布設地区外では低率であること。
 D 流行の主たる感染経路は共通感染であり、継続単一暴露によるものであることのようである。


第64表 赤痢患者収容所別調

第64表 赤痢患者収容所別調