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伊予市誌

一、気候概況

 伊予市の最低温月である一、二月の日平均気温はほぼ五~七℃であり、近年の暖冬傾向で少しずつ上昇している。平地部での年間最極値は氷点下五℃を記録することはなく、しのぎやすい寒さで恵まれた地域である。また、最高温月は八月で日平均気温はほぼ二八℃でこれも漸次上昇傾向にあって耐え難い夏になっている。
 風は年間を通じて四~五m以下の日が多く、風向は北西から西南西の風が約三九%、東から南東三四%前後である。冬季の北西を主とした風の強いときは体感温度は一そう低下する。快晴の日に風向の変化を見ると、海岸と山地が接近しているため海軟風、陸軟風といわれる風が朝夕に二回交替する。夏季に夕凪を過ぎて陸軟風が吹き出すと、昼間の暑さを忘れて夕涼みを楽しむことができる。
 降水量の少ないのは瀬戸内海地域の特性であるが、松山圏もその例にもれず年間一、〇〇〇~一、三五〇ミリの年が一般的で、例年梅雨期と台風シーズンに格別に降雨が多い。この両時期の雨は時に集中豪雨となり、局地的に被害を発生することもあるが、地形的に大河のない当地方の水稲栽培や柑橘経営などには待望の雨となるのである。しかし、例えば一九九四(平成六)年のように歴史的旱魃をもたらすこともある。この年は梅雨期の記録的な少雨が九月まで続いたため、断水など市民生活に大きな影響があり県内外各地からも飲料水の救援を受ける事態になった。農業の被害も少なくなかったのは言うまでもない。
 降雪は暖冬傾向の続く近年ではごく少なく、積雪による交通障害や農林業の被害も極めてまれである。
 霜害についても当地方では特に問題になることはない。
 二〇〇二(平成一四)年の気温で特筆すべきは一~三月の温暖である。殊に三月の日平均気温と最高気温は異常で、そのため桜の開花も西日本各地で一〇日以上も早まり、観桜ツアーの予定が多くキャンセルされる事態となった。梅や菜種の開花についても同様の傾向があったことは当然である。
 第23図では同年の気温がほぼ年間を通じて平年を上回っていることがわかる。このことはいわゆる地球温暖化と軌を一にするもので、今後も降水量の振幅の大きさ、局地での集中豪雨や旱魃傾向などの異常気象を伴うことが憂慮される。

第4表 年度別日平均気温(月平均 ℃)

第4表 年度別日平均気温(月平均 ℃)


第5表 年度別日最高気温(月平均 ℃)

第5表 年度別日最高気温(月平均 ℃)


第6表 年度別日最低気温(月平均 ℃)

第6表 年度別日最低気温(月平均 ℃)


第23図 平成14年及び昭和59年の月別日平均気温比較

第23図 平成14年及び昭和59年の月別日平均気温比較