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伊予市誌

一六、夜泣き石 (稲荷)

 夜泣き石は、今、稲荷神社の境内に風雨にさらされて立っている石であるが、ここにすえられる前は、郡中、灘町の庄屋の宮内家の奥庭にあった。
 この石がどうしたことか、風がなく、月の出ない夜ふけになると、すすり泣きの声を立てるので、夜泣き石と呼んだ。
「これは、どうしたことであろうか。」
と、宮内家では気味悪かっていた。
 あるとき、そのことを聞いて、ある人が宮内家を訪れ、
「この石は何か連れの石があって、それと別れさせられ、ここにすえられたんで、夜暗くなって淋しくなると泣くんにちがいない。今になっては、その連れの石がどこにあるんかわがらんから、氏神様のお稲荷さんの所にある大岩のそばへ置いたら、泣きやむんじゃないかな。」
と言ってくれた。宮内家では、なるほどと思って、さっそく稲荷神社にお願いして、今の所にすえて祭ったという。
 その後、誰れ言うとなく、この石を拝むと、赤ん坊の夜泣きがなおるという評判がたって、この夜泣き石に願をかけにくる人が多くなった。