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伊予市誌

一三、猿神さま (中村)

 江戸時代の初めのころのことであろうか、中村の庄屋の庭に、それは見事な大きな松の木があって、庄屋は殊の外大事にしていた。
 ある朝、庄屋が朝早く起きて、庭に出て見ると、大事な松の木に一匹のサルが来て遊んでいた。庄屋は常日ごろから、サルが大事な作物をよく荒らすので、サルをにくんでいたため、急いで座敷の棚から鉄砲を持ち出して来て、このサルをねらった。するとサルの方でも気がついたらしく、身ごもって(腹の中に赤ん坊がいること)いたのであろうか、大きい腹をさすって見せながら、命ばかりは助けてくれとでも言うように必死の叫び声をあげるのであった。しかし気が立っていた庄屋は、聞き入れる耳を持たず、とうとうかわいそうにサルを撃ち殺してしまった。
 それからというものは、この庄屋の家で不幸がうち続いた。こうなると、庄屋は自分のしかことを後悔するようになってきた。「助けてくれ。」と必死になっていたあのサルを撃ち殺したので、そのたたりかもしれないと思うと、たまらなくなり、さっそくそのサルの祠を建て、猿神さまとしてねんごろに祭ったという。今も、この祠付中村の田んぼの中に残っている。