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伊予市誌

一一、市場の祇園さん (市場)

 いつの時代かわからないが、ずっと昔のこと、市場には村人から親しまれてきた豪族が住んでいたという。
 ある夜、この豪族は夜討ちにあった。油断をつかれたので防ぎきれず、とうとう家来とともに逃げ出しか。ところが、逃げる途中でキュウリのつるに足をひっかけてころび、不運にも敵につかまえられて殺された。村人たちは、これをたいへん哀れんで、祠 (小さなお宮)を建て、祇園さんと呼んで祭った。そして、それからはつるのある野菜は作らない風習(ならわし)が最近まで残っていたという。
 これに似た伝説は、ほかにもかなりあって、場所や人はちがうが、キュウリの代わりにカボチャのつるだったりしている。これに似た伝説をあげると、上野の玉井家の祖先は、泉州(大阪府)岸和田に住んでいた浪人であった。この先祖は、あるときの戦いでユウガオのつるに足をとられて倒れ、そのために敵に討たれた。そこで、その子孫の玉井家では、この先祖の無念を思いやって、その後、今に至るまでユウガオは植えないという。