データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

伊予市誌

3 社会教育の進展

 福祉文化センターの設立 
 一九七四(昭和四九)年一一月、高齢化社会への対応、生涯教育とコミュニティーづくりの推進などの福祉文化活動の拠点として、伊予市福祉文化センターが元郡中中学校跡に建設された。本館は、鉄筋コンクリート造り三階建てで延べ面積二、四九三平方m、事業費総額は一億九、二六二万四、〇〇〇円で、大集会室(体育館併用)を持つ充実した総合センターであった。
 当初、本館一階は老人センター、二階は中央公民館室・本庁地区公民館室・市立図書館などで、三階は視聴覚室・クラブ室・茶花研修室・料理研修室・工芸室・会議室であった。このうち市立図書館は一九八〇年に新築移転したので、以後は会議室に充てられた。
 現在これらの各室は、ほとんど毎日一〇〇%に近い利用率で、住民相互の触れ合いや交流の場、生涯学習の場、自主的な文化団体の研鑽の場、趣味と健康づくりの場として、大きな役割を果たしている。

 地区公民館の改築 
 市内各地区公民館は、福祉文化センター内の本庁地区公民館を除き、中村及び上野地区公民館は旧村役場の老朽建物を使用し、大平地区公民館は農業協同組合の施設の一部を利用していた。このため、生涯学習やコミュニティーづくりの推進をするなかで、各種グループの活性化を図る地域住民の拠点として新しい公民館の建設が望まれた。
 市当局はこの要望を受けいれて、昭和五四年度に上野地区公民館を新築、以後続いて大平・中村地区公民館を建築した。その状況は、次のとおりである。

 <施設名称>  <建設年度>  <構造・規模・面積(平方m)>     <事業費総額(千円)>
 大平地区公民館  昭和五五   鉄筋コンクリート三階建 延五八一・一六    八六、三九二
 中村地区公民館  〃 五六   鉄筋コンクリート二階建 延六九二・五四   一一四、三〇三
 上野地区公民館  〃 五四   鉄筋コンクリート三階建 延六四三・一六   一〇一、八七七

 伊予市コミュニティーセンター(緑風館)の建設 
 南山崎小学校の西北に隣した位置に、地域活動の多目的施設として伊予市コミュニティーセンター(緑風館)が、一九八四(昭和五九)年に建設された。鉄筋コンクリート平屋建てで、延面積は三九三平方m、総工費は八、五九九万八、〇〇〇円、うち二、〇〇〇万円は、財団法人自治総合センターの助成によった。館内には、柔道畳を敷いた集会室兼体育館、三世代交流室、婦人研修室があり、屋外には老人や子どもの広場があり、三世代ともにスポーツを通して、楽しく交流し合う場となっている(第210図)。

 伊予市民憲章の制定 
 伊予市発足後約二〇年、三万余の伊予市民の一人ひとりが、市民としての誇りをもち、市の発展を目指す共通の目標としての市民憲章が必要であるとの声が高まってきた。市当局は、この要望を受けて、「広報いよし」で全家庭に文案の応募を呼び掛けた。数多くの応募作品のうち、玉岡乾三郎(当時本庁地区公民館長)のものが選ばれ、一九七五(昭和五〇)年一〇月一日、待望の『伊予市民憲章』が制定された。

      伊予市民憲章
  わたくしたちは谷上の峰からながめる瀬戸の島々、美しい五色浜、この風土と豊かな伝統のまち、伊予市の発展を願い市民の総意として力強く実践する憲章を定めます。
  花と緑につつまれた美しいまちをつくりましょう。
  希望と意欲にみちた生産のまちをつくりましょう。
  スポーツに親しむ健康なまちをつくりましょう。
  心のかよいあう福祉のまちをつくりましょう。
  かおり高い教育と文化のまちをつくりましょう。

 コミュニティーづくり 
 太平洋戦争後、我が国の一人当たりの国民所得は、昭和三〇年代に比べて同四〇年代は約三・二倍と飛躍的に上昇し、かつて経験したことのないほどの物質的繁栄を得た。しかし、その反面に地域社会は、人間関係の面からも生活の面からも、人間性が失われるようになった。そこで、従来の古い地域共同体とは異なった新しい集団、すなわちコミュニティーの創造が期待された。
 本市では、一九七六(昭和五一)年、モデルコミュニティー審議委員会と同推進委員会を発足させて翌年一月、旧町村別に第186表のような四か所のモデルコミュニティーが発足した。
 以後各コミュニティーでは、地区公民館・推進委員会を中心に、活動を進めた。

 生涯学習の充実 
 時代は、昭和から平成に移り、市民の生活意識や学習ニーズは多様化・高度化し、急速な情報通信技術の発展、地球環境問題の顕在化など、社会を取り巻く環境は大きく変化してきた。こうした状況の中で、豊かな人間性の育成とうるおいと生きがいの人づくりを行うためには、環境に適応する地域に根ざした社会教育を推進し、生涯学習を通して地域の教育力の充実を図る必要が生じた。
 本市における生涯学習は、家庭教育・青少年教育・女性教育・成人教育・高齢者教育、それぞれの分野で各地区公民館を中心に、地域の社会教育関係団体と連携しながら活発に行われている。
 家庭教育では、保健センター・子育て支援センターと連携して妊娠期の母親を対象にした子育て講座を開催するほか、各地区公民館で、保育所・幼稚園と連携して家庭教育学級を実施している。
 青少年教育では、学校の完全週五日制に対応し、土・日曜日に野外・体験活動、スポーツ教室などを実施している。
 女性教育では、地区の婦人会を中心に、人権・同和教育、廃油石鹸作りなどの環境美化事業、スポーツによる交流活動を実施している。
 成人教育では、中央公民館で青年生花教室、青年料理教室、古典文学講座を開催するほか、各地区公民館でパソコン教室などの成人教育学級を実施している。
 高齢者教育では、地区の老人クラブを中心に、料理教室・体操教室・スポーツ大会などの高齢者学級を実施している。

 社会教育研究大会・生涯学習推進大会 
 社会教育大会は昭和四〇年度に第一回が開催され、以後市社会教育の定例行事として続けられた。同五七年度では、三世代交流会とあわせて開催した。
 平成七年度からは、心豊かで生きがいのある生活を送るため、共に学び、共に生きることのできる学習基盤づくりを目指すとともに、活力と潤いに満ちた香り高いふるさとづくりを進めることを目的として、伊予市教育委員会と伊予市社会教育関係団体連絡協議会の主催により生涯学習推進大会として開催した。当初、PTA・愛護班・文化協会・体育協会・老人クラブがそれぞれテーマを決定し、司会者・問題提起者・記録者・助言者を選出して分科会を開催する方式で実施していたが、平成一五年度から全団体が一堂に会し、それぞれの団体からパネリストを選出して意見交換・協議を行うパネルディスカッション形式で実施している。

 市民大学の開催 
 昭和四八年度、第一回の伊予市民大学が開催された。複数の講師で入場料五〇〇円であったが、受講券は全部売り切れ好評を得た。以後毎年第187表のように実施し、市民の文化・教養を高めることに貢献している。現在は、伊予市教育委員会と伊予市民大学実行委員会の主催により入場料三〇〇円で開催している。

 三世代交流の船 
 今日の社会は、核家族化が一層進行するなかで、世代の断絶、地域社会に対する住民の関心の低さなど、さまざまな弊害を生じている。そこで明るく住みよい伊予市づくりを進めるためには、地域住民各層の心の交流が基盤となるため、この機会に、伊予市の青年・婦人・老人の一日海上の集い、話し合い(意見交換)・学習会・交換会を通して交流を深め、相互の意志の疎通を図り、三世代の相互理解を培いながら、思いやりのある暖かい人間関係を築くことを目的として、伊予市教育委員会で「三世代交流の船」が次のように計画された。

  ①主  催 伊予市教育委員会
  ②後  援 伊予市連合婦人会・伊予市老人クラブ連合会・伊予市連合青年団
  ③実施期日 昭和五四年八月二二日
  ④実施方法 瀬戸内海汽船「しろがね丸」を借上げ、宮島までの往復の航路で、青年・婦人・老人が、別途定めた研修日程により、各班編成による班別会・学習会・交換会(レクリェーション等)を実施して、相互交流を深めるとともに、寄港地の宮島では、厳島神社など平家一門の史跡を訪ねて、現地で学習会を行う。
  ⑤参加者 市長・市保健婦・教育長・教育委員会職員・老人一五六名・婦人六五名・青年三四名の計二七二名
  ⑥班編成 交流会を円滑にすすめるために、参加者を五班に編成する。
  ⑦班別交換会(午前中) 自己紹介・班世話人の紹介・参加各団体代表者による地域活動についての発表と意見交換
  ⑧班別交流集会(午後) 次の交流会のテーマに沿って、司会者を中心として、出来る限り広く、多くの意見発表を求めて、三世代に通ずる身近な問題を中心に話し合いを進める。その主な問題は次のとおりである。
    今と昔のちがいあれこれ ― 物の見方・考え方・地域の様子の変化
     老人・婦人・青年の地域活動
     世代の相互理解を阻むもの
     魅力ある伊予市づくり
     暖かい地域社会を築くには
   ⑨学習会講師 岡田小学校日下部正盛教諭、題は宮島の歴史と平家の興亡。

 このような試みは、これまでになかったことで、三世代の人たちが船上で打ちとけて話し合い、お互いのコミュニケーションができ有意義であったという。
 一九八〇(昭和五五)年は大三島へ、一九八一(昭和五六)年は江田島へと、第一回に準じて実施されたが、以後は中断している。

 青少年補導センター 
 一九六七(昭和四二)年、青少年の健全育成を図るため、非行防止活動を総合的に推進する拠点として、伊予市青少年補導センターが設置された。以後、地道な補導活動を続け、今日の少年による凶悪犯罪の増加、低年齢化傾向、インターネットや携帯電話などの出会い系サイトによる犯罪など多様化する中、青少年補導委員を中心に街頭巡回指導活動を行っている。
 また、補導センターに置かれている補導協議会では、教育、警察などの機関及び関係団体の代表者のうちから委嘱された委員により、定期的に情報交換、補導のあり方などについて協議を行い、青少年の健全育成を推進している。

第186表 モデルコミュニティーの活動方針

第186表 モデルコミュニティーの活動方針


第187表 伊予市民大学(文化講演会)歴代講師名簿 1

第187表 伊予市民大学(文化講演会)歴代講師名簿 1


第187表 伊予市民大学(文化講演会)歴代講師名簿 2

第187表 伊予市民大学(文化講演会)歴代講師名簿 2


第187表 伊予市民大学(文化講演会)歴代講師名簿 3

第187表 伊予市民大学(文化講演会)歴代講師名簿 3