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伊予市誌

三、大正期以降の金融

 一九一四(大正三)年より起こった第一次世界大戦は、経済界に好影響をもたらした。この間銀行数は整理合同されて減っていき、県内では大正元年には四七銀行が大正一〇年には四一銀行となったが、逆に支店網は拡充された。一九一九(大正八)年四月には、郡中町に大洲銀行郡中支店が開店された。また、このころから松山に日銀支店を設置する運動も起こってきた。
 第一次世界大戦による好況も一九二〇(大正九)年ころより反動期となり、金融界に恐慌をもたらしたため、銀行界は多大の打撃を被り銀行の破たんが続出した。特に一九二二(大正一一)末には関西一帯の銀行に波及し、更に翌年九月の関東大震災による人心の動揺は、銀行に対する不信感を一層強くしていった。
 一九二二(大正一一)年三月には、経済恐慌、中小企業倒産などの余波を受けて、伊予農業銀行が松山商業銀行を吸収合併して愛媛銀行と改称することになった。郡中町に置かれていた第171図の伊予農業銀行郡中支店は、愛媛銀行郡中支店と改称された。
 なお、大正時代末期に郡中町で開業していた銀行には、前記の銀行を除いて今出銀行郡中支店、今治商業銀行郡中支店があった。これら銀行のうち、大洲銀行及び今治商業銀行のほかはすべて松山に本店があったので、郡中地方の金融界は松山の支配下に置かれるという状態であった。
 また、郵便局の金融業務、個人経営及び公営の質屋や金貸業などもあって、それぞれ金融業を営んでいた。
 一九二七(昭和二)年三月半ばから四月末にかけての金融恐慌は県下にも大きな影響を及ぼしたが、なかでも今治商業銀行の休業は、県下の産業界に打撃を与え銀行に対する預金者の信用を減少させた。不安動揺が甚だしかったのは、中小企業家や小口の預金者であった。
 この不景気の最中の一九二八(昭和三)年、郡中湊町の梶野賢太郎は、金融難にあえぐ周囲の状況にかんがみ、町民相互扶助の目的のため町民自身の金融機関を持つ必要性を痛感して町内有志と図り、同年五月に有限責任郡中信用組合を同町灘町に設立し、七月に営業を始めた。その後、同組合は中小企業をけじめ地元の金融機関として発展し、名称も一九五五(昭和三〇)年六月、伊予信用金庫と改称された。また、業務を拡張して、一九五九(昭和三四)年には松前町新立に、一九六三(昭和三八)年には中山町泉町にそれぞれ同金庫出張所を設置した。なお、松前出張所は昭和三七年七月松前支店となった。
 一九二八(昭和三)年の新銀行法の制定により資本金一〇〇万円以下の銀行は認められなくなったので銀行の合同が促進され、同年一二月に芸備銀行は愛媛銀行・西条銀行・伊予三島銀行を吸収合併した。更に大洲銀行は、一九三四(昭和九)年八月、第二九銀行・八幡浜商業銀行と合併して予州銀行を設立した。
 一九三一(昭和六)年九月、満州事変のぼっ発と同年末の金輸出再禁止の措置により、やがて金融界も好転のきざしを見せはじめ、徐々に景気は回復していった。翌一九三二(昭和七)年一一月には、日銀松山支店が松山市三番町に設置されるなど県下の経済界も活気を取り戻してきた。
 しかし、郡中町に支店が置かれていた今出銀行は、一九三三(昭和八)年四月、破産し解散するの止むなきに至った。その後、銀行の合同は緩和の傾向にはあったが、中予地方では一九三七(昭和一二)年、日本勧業銀行が愛媛県農工銀行を吸収合併し、五二銀行と仲田銀行とが合併して松山五二銀行が成立して中予の中心銀行となったので、同年一二月に五二銀行郡中支店は松山五二銀行郡中支店となった。
 一九三六(昭和一一)年以来提唱された一県一行主義による銀行合同が進展し、ついに一九四一(昭和一六)年五月、松山五二銀行は予州銀行・今治商業銀行と合併し、同年九月一日に伊予合同銀行として開業した。これに伴い、松山五二銀行郡中支店は伊予合同銀行郡中支店と再び名称を変更した。
 その後、終戦時までの主な金融関係の事項を列挙すると左のとおりである。
 昭和一六年九月 今治商業銀行郡中出張所を、伊予合同銀行郡中北出張所として継承する。(合併による)
 同年   同月 予州銀行郡中支店を、伊予合同銀行郡中南支店として継承する。(合併による)
 同年  一〇月 伊予合同銀行郡中北出張所を廃止する。(業務を郡中支店に引き継ぎ)
 同年一七年三月 伊予合同銀行郡中南支店を、郡中南出張所に変更する。
 同年一八年三月 県内無尽五社が統合して愛媛無尽株式会社を設立する。
 同年一九年五月 伊予合同銀行郡中南出張所を廃止する。(業務を郡中支店に引き継ぎ)
 同年一九年一二月 伊予合同銀行と伊予相互貯蓄銀行との合併により、伊予相互貯蓄銀行郡中支店を、伊予合同銀行郡中北支店として継承する。
 同年二〇年三月 伊予合同銀行北支店を廃止する。(業務を郡中支店に引き継ぎ)